第3章(2011~2021年) 能力の向上を通じてデンソーに対するパートナー企業の信頼を強化

3. 地域ごとの経営のかじ取り

(4)デンソーの将来計画の中核を成す地域人材

2018-DIIN地域-有馬社長(現会長)とのローカルタレントディナー
2018-DIIN地域-有馬社長(現会長)とのローカルタレントディナー
リーダーシップのために主要なインド国内人材を育成

2017年から2018年にかけての変革の年、デンソー・インドは常に変化するインドの自動車業界における勢力と影響力の強化を目的とした長期ビジョンを戦略的に展開した。未来を見据えたこの戦略の要は経営の現地化だった。インドのメンバーを段階的に意思決定プロセスに参加させ、組織内のエンパワーメントと当事者意識を促進する、入念な一手である。

デンソーが20年にわたるインド市場への揺るぎない貢献を祝うのに合わせて、現地上級管理職の育成という重要な取り組みが具体化した。こうして、基礎となる3本柱を土台に据えた総合的な経営改革がスタートした。その柱とは、意思決定権の分散化、方針とプロセスの簡略化と合理化、そして説明責任と透明性の強化である。

こうして2015年の状況を背景に、国内人材育成の基盤作りが開始され、当事者意識と現地の環境に対する深い理解を備えた強固なリーダーシップの第2層が生まれる舞台が整った。この分散型リーダーシップパターンは単なる再編の実施ではなく、現地社員の能力を高めて上級管理職へと昇格させるための戦略的計画であった。

スキル向上と人材育成はこの変革の道のりの基盤となり、重要な責務の割り当てと委任に焦点が当てられた。多様なインドのグループ企業(IGC)全体から候補者を見つけ出すために、マネージングディレクターの積極的な関与と細心の推薦・選定プロセスが求められた。厳しい基準を満たして選考に残った候補者は、次の2~5年で実施が計画されているロードマップに着手した。

この未来を見据えたアプローチの要となったのが、重要な役割の継承計画であり、これによって責務のシームレスな移行が可能となった。意思決定分野の役割と責務の明確化は、より俊敏で迅速な組織構造に貢献する土台となった。特に、優秀なメンバーをグローバルグレードの地位に昇格させたことは、卓越を認め、これに報いるデンソーの約束を明確に示すものだった。

経営の現地化に向けたこうした動きは、急速に発展するインド市場の複雑さをデンソーが乗り切る上で極めて重要だった。デンソーは現地の人材に権限を与えることで、インドの社員独自の強みと見識を生かし、イノベーションが発展する環境を育ててきた。この章では、デンソーの現地人材への戦略的シフトが明らかになるだけでなく、継続的な人材開発と権限委譲への努力が裏付けられる。企業の成功が社員の才能や貢献、情熱と密接に結びついていることを認識しているデンソーは、多様性を受け入れ、協調とイノベーションの文化を育むことで、インド市場における成長と繁栄を確かなものにしている。