3. 地域ごとの経営のかじ取り
(8)先の見えない時代と不滅の精神 ― 新型コロナウイルス感染症による大規模な景気減速を乗り越える
① 緊急事態対応策:健康を脅かす世界的流行
2019年には景気が悪化し、特に自動車業界では売上高が10~15%減少した。会計年度の終盤には、世界的な公衆衛生上の危機である新型コロナウイルス感染症が出現し、かつてない影を世界中に落とした。予期せぬ未曾有の難題となった感染爆発は、自動車産業に特に大きな打撃を与え、さまざまな悪影響を引き起こした。この嵐の真っただ中に放り込まれたデンソー・インドは、未知の領域を進むことを余儀なくされた。
世界中が感染爆発の多面的な問題と格闘する中で、デンソー・インドは断固たる措置を講じて緊急事態対応策を実施した。第一目標は、社員の健康と安全を優先しながら、新型コロナウイルス感染症の拡大を制御・緩和することに移った。この章は、変化し続ける状況に迅速に対応する会社の努力を背景に展開される。
迅速な対応は、社員全員の幸福の保証に重点を置くデンソー・インドの対応の要となった。社会的距離を保つための措置、在宅勤務の実施、厳格な保健プロトコルは、会社の操業環境に欠かせない要素となった。こうした状況の中、前例のない困難に不滅の精神で立ち向かったデンソー・インドの社員のレジリエンスと適応性が、明確に示されることになる。
② 売上成長の復活 ― 緊急対応措置と回復
新型コロナウイルス感染症の第2波がインドで猛威を振るう中、デンソー・インドは事業活動のあらゆる面に波及する前例のない困難に直面していた。最も差し迫った懸念として浮上したのが、売上不振だった。このため会社は生き残りだけでなく力強い回復を果たすために、断固たる行動を取ることになった。厳しいコスト抑制を背景に展開されるこの章は、嵐を乗り切るための会社の努力を体現する章である。
危機が発生すると、デンソー・インドは緊急対応活動と回復のための手順を速やかに実施した。この物語では、プラスのキャッシュフローを維持して損失を回避するために急務となった厳しい決断について掘り下げる。事業のあらゆる面が精査され、不要不急の支出と投資が制限された。スタッフの福利厚生イベントは保留され、死蔵品と高い物流コストに対処するための顧客との交渉が極めて重要な側面となった。
この章の核心は、事業緊急対応措置と回復イニシアチブとして講じられた異例の措置にある。新型コロナウイルス感染症危機を乗り切るために会社が採用したアプローチは、リスクの綿密な分析と地域インパクトアセスメントの重視であった。インドのグループ企業(IGC)との合意に基づく地域緊急対応指針と回復計画の策定は、大幅な生産数量の減少を相殺するために極めて重要なものとなった。
このレジリエンスの旅で読者が目にするのは、顧客との複雑な交渉、長期的な投資とプロジェクトの延期、最終的な黒字を維持するための揺るぎない努力である。さまざまな環境要因を乗り切るための戦略的な台本として展開されるこの章では、人件費削減努力、採用保留、変動費削減戦略に関する詳細な洞察が示される。
重要な2020年度上半期が進むにつれて物語は本格化する。目標は数量効果を除く回復に設定されていた。2020年4月と5月の売上はごくわずかで、問題はますます深刻化していった。このような時期における会社の対応は、デンソー・インドの企業文化を決定付ける「積極性」「適応性」「不滅の精神」の決定的な重要性を明確に示している。
さまざまな困難を前にしても、デンソー・インドの楽観的な姿勢とレジリエンスは、針路を示す灯台として浮かび上がる。この危機管理対策は、デンソー・インドを導いて景気減速を乗り切らせただけでなく、その後さらに力強く再生する態勢を整えさせるものでもあった。この「売上成長の復活:緊急対応措置と回復」には、決意、適応性、予期せぬ困難に対する勝利の物語が凝縮されている。
③ 思いやりの原動力 ― 地域社会への貢献 ― 「調和の中の共存」
私たちは当初から近隣の村々における地域社会の向上のために多様な取り組みを行い、社会への還元に尽力してきた。
CSR活動の分野では、DNKI(デンソー・キルロスカ・インダストリーズ)は2017年から「SDG」、そして「環境と安心」の「大義」に重点を置いてCSR(社会的責任)を推進している。
社会貢献活動を積極的に推進するDNKIは、デンソーの企業文化を象徴する一つのキーワードを生み出した。それは「調和の中の共存」であった。
この言葉は、地球のより良い未来を創造し、チームメンバーとその家族に意識と責任感を育み、持続可能な環境を地域に創出し、調和の中に身を置いて共存するための、会社の取り組みを反映している。

2017年、2018年、2019年のCSR資金を利用して、DNKIは2019年に250人の生徒のために学校を建設した。引き渡し式にはデンソー本社メンバーと行政機関や地域のリーダーが出席した。

2020年、新型コロナウイルス感染症の世界的流行がもたらす困難の真っただ中で、デンソー・インドは重要な医療のニーズに対処することで地域社会の福祉に対する取り組みを拡大した。重要なイニシアチブは、二次救命処置機能を備えた最先端のモバイルICU救急車を、ネラマンガラの地方公共医療サービスに提供することだった。このイニシアチブは、医療インフラを強化するだけでなく、この困難な時期に地域社会の安心感を醸成する重要性を訴えることも目的としていた。
企業の社会的責任への取り組みを続けるDNKIは2022年、水を中心とするソリューションを近隣の三つの村に導入して、大きな前進を果たした。この包括的なCSR活動は、太陽光ソリューションを通じたカーボンニュートラルの達成と、持続可能な水管理の推進に焦点を当てている。太陽光発電システムの設置を伴うこのイニシアチブは、カーボンニュートラルなアプローチを確保しながら、村の水不足の懸念に対処している。さらにデンソー・インドは、水資源を持続的に管理して地域社会が継続的に利用できるように地下水涵養戦略を実施した。この多面的なアプローチは、環境と地域社会の福祉に対するデンソー・インドの全体的な取り組みを反映している。
カーボンニュートラルを推進するために太陽エネルギーを使用して持続的に利用できるように地下水涵養を行った。
DNKIは三つの村すべてに必要不可欠な水の供給を手配し、ソーラーポンプを使用して水のくみ上げと配水を行い、雨水を土中に涵養して蓄えるためのウォーターチェックダムも建設した。
2021年と2022年に水を土中に涵養するためのチェックダムを建設した。REを用いた太陽光発電による揚水ソリューションと配水システムも利用した。
インド社会の新型コロナウイルス感染症対策を支えるデンソーの貢献としては、その困難な期間、デンソーの技術者たちは最前線で闘う人たちを支援するために自らのスキルと専門知識を用いることを決意した。彼らが考えたのは、医療の専門家、病院職員、警察、行政職員をウイルスへの直接暴露から保護するためのフェイスシールドだった。

2020年、デンソーがフェイスシールドを開発して警察と行政機関に寄贈した。
デンソーの技術者たちは、デンソー「スピリット」を通じて社会への思いやりと実践を示すために、新型コロナウイルスに直接接触する医師、病院職員、警察、行政職員を何らかの形でサポートできるようにフェイスシールドの生産を決定した。
困難な状況にもかかわらず、チームはわずか2週間で外部と内部の両方で使用できるようにヘッドバンドのデザインを2種類考案した。
インドのデジタル化を支援するため、学校内にコンピュータラボを設置するCSRの取り組みを行った。
2022年、DIINは5月17日、DIINから6km離れたバングローラ村の公立上級中等学校にコンピュータラボ2カ所を設置した。
デンソーの技術者たちが忙しくフェイスシールドを開発している間に、会社のインド部門であるDIINも地元地域社会の支援に乗り出していた。
2022年5月17日、DIIN(デンソー・インターナショナル・インド)はバングローラ村の公立上級中等学校にコンピュータラボ2カ所を設置した。DIINから6km離れたこの村の学校では、資源不足のために生徒に質の高い教育を提供するのに苦労していた。
DIINのチームは、新しいラボ2カ所の建設・改修と、新しいコンピューター44台の設置に精力的に取り組んだ。生徒たちが快適で学習しやすい環境を確保できるように、作業台、椅子、黒板などのモジュール式の備品も提供した。
この学校にコンピュータラボを設置したことはDIINにとって重要な節目となった。周囲の人々の生活を向上させるという会社の誓いが、行動によって明確な形になったのだ。DIINのマネージングディレクターは次のように述べている。「DIINは今後も、企業の社会的責任を果たす取り組みを続けます。このプロジェクトを通じて、村の子どもたちの学習環境がより良いものになることを願っています」
デンソーの技術者とDIINのチームは、最も困難な時代でも社会に良い影響を与えることは可能だと証明した。その努力は私たち全員の刺激となり、世界をより良い場所にする上で思いやりと共感が重要であることを思い出させてくれた。