第3章(2011~2021年) 能力の向上を通じてデンソーに対するパートナー企業の信頼を強化

3. 地域ごとの経営のかじ取り

(5) 2018年インド中期方針:次なる事業成長に挑み、次のステージへ向かう

「再生後計画」

インドのダイナミックな政治経済情勢を受けて、デンソーは2015年から2018年にかけて再生後の重要な岐路に立っていた。デンソーの戦略的進化の基礎は、1991年に保護主義的政策から自由化へと移行したインド経済の歴史を背景に築かれたものだった。この期間のインド経済は、2016年の高額紙幣廃止と2017年の物品・サービス税(GST)導入の影響で引き起こされた、一時的な景気減速と格闘していた。

しかし、こうした課題の真っただ中にあった2018年、インド中期方針が策定されたことでパラダイムシフトが起こり、新たなチャンスの時代が到来した。世界で最も急速に成長している市場の一つであるインドは、デンソーが生かすことのできる非常に大きな可能性を秘めていた。この方針では、2020年以降の規制変更を受け入れることの重要性が強調されており、変化する市場環境に率先して適応する必要性が示されていた。

デンソーの戦略の中核は、次なる事業成長段階に向けた挑戦にあり、これが「再生後計画」にまとめられた。ディーゼルコモンレールシステム(CRS)の発展に伴い、環境・安全分野を中心に拡販が重要な柱となった。これは強固な技術的専門知識に支えられた現地の商用車(CV)顧客基盤の拡大を伴った。

同時に、研究開発(R&D)への注力がますます進んだ。その目標は、二輪車燃料噴射(2W FI)やCRSを含むシステム事業の拡大に向けたエンジニアリング能力の強化であった。デンソーは競争力を確保するために、変化する市場の需要に合わせて生産インフラ、サプライベース、システム能力の強化を優先した。

2020-DNHAプラント2の拡張を祝う
2020-DNHAプラント2の拡張を祝う

インド中期方針の包括的目標は、すべてのインドグループ企業(IGC)を黒字に引き上げ、持続的な成長のための組織体制を強化することであった。DNHA第2工場は2019年に工場拡張によって重要な節目を迎え、優れた製造ハブとしての地位をさらに固めた。加えて、新たな電子工場の立ち上げが大きな一歩となり、卓越と成長に対するデンソーの取り組みがさらに強化された。