第3章(2011~2021年) 能力の向上を通じてデンソーに対するパートナー企業の信頼を強化

3. 地域ごとの経営のかじ取り

(3)インド事業再生および事業再編:2015

経営環境の変化

2012年、インドの自動車市場は大幅な売上の低下に直面した。背景には欧州連合危機、通貨の下落、高インフレ、地域問題などの多様な要因があった。需要の減速をもたらすマルチ・スズキ・インディア社の労働争議もその一つだった。この困難な状況に対応するために、デンソーは2012年から2015年にかけて、黒字転換を第一目標とする包括的な再生計画に着手した。

デンソーが採用した主要戦略は生産インフラの強化であった。業務効率の向上を目的とするDNIN(デンソー・インド)からDNHA(デンソー・ハリアナ)へのアスモ事業の移管もその一つだ。さらにDNHAは再編を経て第1工場となり、ジャジャルの第2工場の複数事業拠点化の推進に重点が置かれた。

市場における地位のさらなる強化を図るデンソーは、プリコール社との戦略的な合弁事業として、2013年にメータクラスタを扱うデンソー・プリコールを設立した。この提携はその後2016年のDPINの合併で強固なものとなり、メータクラスターセグメントにおけるデンソーの足場が固められた。

この再編の取り組みはDNINへと拡大され、同社はより弾力的な運営ができるよう、2013年に上場廃止となった。その後2014年には別の出資企業が出資を取りやめ、経営の自立性と俊敏性を高める2015年のDNIN経営改革への地ならしが進んだ。

2012-DNHAによるSUBROS火災事故のライン復旧支援
2012-DNHAによるSUBROS火災事故のライン復旧支援
2012-DNHA支援の証-SUBROS火災事故におけるスリ氏(SUBROS社長)との協力
2012-DNHA支援の証-SUBROS火災事故におけるスリ氏(SUBROS社長)との協力

2015年、デンソーは生産性を最適化するためにエンジン制御モジュール(ECM)の生産をスブロス社に委託し、業務の効率化と費用対効果の向上を図った。この戦略的な一手が功を奏してデンソーは4年ぶりに黒字を達成し、再生計画の実施は一つの節目を迎えた。

同時に、インド政府は2015年に自動車政策の大幅な変更に着手し、特に排出ガス基準関連の規制を世界基準に合わせて強化すると主張した。これはデンソーにとって非常に大きなチャンスであった。キャリブレーション活動を通じて顧客の規制順守を速やかにサポートし、業界における信頼できるパートナーとしての地位をさらに確固たるものにできるのだ。

事業再生と戦略的な再編の取り組みが主役となった2015年は、デンソーにとって大きな転換の年となった。先を見越した対策と戦略的連携を通じてさまざまな課題を乗り越えながら、より強く、レジリエンスをさらに高めたデンソーは、ダイナミックなインドの自動車市場における持続的な成長と成功に向けた態勢を整えていった。