3. 地域ごとの経営のかじ取り
(1) デンソーの事業拡大と戦略 ― 「INDIAプロジェクト」の立ち上げ
インド事業再生および事業再編
絶えず変化するインドの自動車業界において、2012年のデンソーは重大な岐路に立っていた。その背景には、注目に値する国、特に小型・低価格車にとって非常に魅力的な市場として描かれる、インドの政治的・経済的な状況があった。こうした可能性の波に乗り、デンソーは2009年から2011年にかけて40%を超える売上増を見込んでいた。その原動力は生産供給の包括的な改革だった。デンソー・ハリアナ(DNHA)は複合事業拠点へと進化して、この成長に大きく貢献する態勢を戦略的に整えていた。
成長著しいインド市場で存在感を高めて成果を得るために、デンソーは2015年までの堅実な事業拡大を目指して壮大な「INDIAプロジェクト」を立ち上げた。この戦略的な取り組みは2012年に本格化した。その特徴は、デンソーの事業環境を再構築する数々の重要な取り組みだった。


「INDIAプロジェクト」の重要な一手として、アスモの小型モーター事業のDNIN(デンソー・インド)からDNHAへの移管があった。この戦略的な配置転換の目的は、生産能力の最適化と効率性の向上であり、市場の動きに応えて俊敏性を維持するデンソーの努力を反映するものだった。
同時に、技術革新と顧客中心ソリューションに対するデンソーの努力は、デンソー・インターナショナル・インド(DIIN)に研究開発(R&D)テクニカルセンターを設立したことからも明らかだった。これが、開発支援を通じて現地顧客への拡販に注力する、DIINのアプローチの大きな転換となった。2011年にはスブロス社との合弁であるサーマル研究開発センターが設立され、インドの自動車業界におけるサーマル技術の発展に向けたデンソーの取り組みがさらに強化された。
「INDIAプロジェクト」の一環としてジャジャルに新しい製造部が設置され、DNHAが複合事業拠点として見直された。この戦略的拡大には、インド市場の需要に応えるだけでなく、最先端ソリューションを提供するフロントランナーとしてデンソーを位置付ける目的があった。

「INDIAプロジェクト」は単なる事業拡大ではなく、技術、生産、研究におけるデンソーの強みを生かして複雑なインドの自動車事情を乗り切る総合戦略だった。この章ではデンソーの戦略的イニシアチブの物語が展開し、インドの自動車業界における持続的な成長の道を歩み始めたデンソーのレジリエンス、適応性、先見性が示されている。