Episode3-1 デミング賞への挑戦

自分たちを過信せず、
技術やノウハウを
磨き続けているだろうか?

1958年、日本政府は「5年後に貿易の自由化を行う」と発表した。
「アメリカ車が輸入されたら、我々はどうなるのか」
国内の自動車メーカーはもちろん、デンソーにとって大きな脅威だった。
そんな中、我々は一つの結論を導き出した。

「価格ではない。
品質で、世界と勝負する」

創業間もないころから、
デンソーはQC(Quality Control)の導入を進めてきた。
自分たちの強みを磨き、激化する国際競争を勝ち抜く。
そのために、明確かつハイレベルな目標に狙いを定めた。
品質管理の世界的な権威の名を冠した「デミング賞」だ。
審査基準は非常に厳しく、世界最高レベルの知識・技術の習得が不可欠。
ここから全社一丸となった、凄まじい努力が始まる。
まずは過去の受賞企業を訪問し、
どんな準備や努力をしたのか、徹底的にヒアリングした。
著名な大学教授にも指導を仰ぎ、社外セミナーにも積極的に参加。

自分たちの知識や経験への過信は、一切なかった。

さらに独自のテキストを作成し、
経営者・管理者・スタッフ、階層別の教育計画を設定。
現場でも毎日のように勉強会が開かれた。
当時の社員5136人が、
1人残らず「品質管理」の習得に取組み、
自分たちの仕事の進め方を根底から見直した。
「日本電装の社員はひと目でわかる」当時の近隣住民の言葉だ。
社員は皆、通勤電車の中で熱心に品質管理の本を読んでいたという。
「QC……QC……」という父の寝言を、毎晩聞いたという息子の話もある。
講師の一人は「この会社は怖い。間違ったことを教えても徹底してしまう。
うっかりしたことは言えない」と漏らしていたという。
凄まじい努力は、実を結んだ。
1961年10月、デンソーはトヨタグループ初のデミング賞を受賞。
日本国内の品質管理の底上げにつながる
管理制度の開発にも大きく貢献した。
全社一丸となった経験は、研究の本質を伝えている。

研究職かどうかは関係ない。
自分の仕事の質を追究し、
研ぎ澄ませていくことが、
我々にとっての研究なのだ。

このエピソードとつながるスピリット

Spirit 1

先進先取

変化を先取りしたい

Spirit 2

先進創造

新しい価値を生み出したい

Spirit 3

先進挑戦

難しい壁を乗り越えたい

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