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デンソー、環境・安全・快適・利便分野で先進技術を開発 ―レクサスLS460に搭載―

2006年9月25日

 株式会社デンソー(愛知県刈谷市、社長:深谷 紘一)は、環境・安全・快適・利便の各分野で、9月に日本で発売されたレクサスLS460用に、先進的な新技術、新製品を開発しました。

 各分野の主な新製品は次の通りです。

環境 世界初のモータ駆動による電動可変バルブタイミング(VVT-iE)システム
安全 新プリクラッシュセーフティ(PCS)システム用製品
快適 乗員一人ひとりに快適な空調を提供する新エアコンシステム
利便
  • スマートエントリー&スタートシステム用の世界最薄カードキー
  • TFT液晶ディスプレイ付メータ
  • 世界初のリモートイモビライザー機能を持つリモートセキュリティシステム
  • 世界初の傾斜検出機能付イナーシャセンサ

電動可変バルブタイミングシステム


電動可変バルブタイミングシステム

 環境分野において、ガソリン自動車には、優れた走行性能の実現と共に、燃費低減、排出ガス中の有害物質低減が求められています。デンソーは、この要求に対応して、トヨタ自動車株式会社と共同で、世界で初めてのモータ駆動による電動可変バルブタイミングシステムを開発しました。

 可変バルブタイミングシステムは、運転の状況に応じて、エンジン燃焼室の吸気、排気バルブの開閉タイミングを制御します。今回開発した電動可変バルブタイミングシステムは、これまで油圧を介して制御していた吸気バルブの開閉タイミングを、モータにより直接制御するため、従来に比べ、きめ細かな吸気バルブの開閉制御が可能です。これにより、高出力化と低燃費化を実現します。また、従来システムで制御が難しかった、エンジンが低温や低回転の場合における、バルブタイミングの最適制御を可能にし、排出ガス中の炭化水素を低減します。

新PCSシステム用製品

 安全分野では、トヨタ自動車の新しいPCSシステム【注1】用に、次の4つの製品を供給しています。

  • ステレオ画像処理ECU
  • 走行支援ECU【注2】
  • 前方ミリ波レーダ
  • プリクラッシュシートベルトECU

 このPCSシステムは、車両前方、後方の障害物を検知するミリ波レーダと、車両前方の障害物を撮影するステレオカメラ、運転者の顔の向きを撮影する車室内カメラを搭載しています。

 ステレオ画像処理ECUは、ステレオカメラからの画像信号を高速で処理し、処理した信号を走行支援ECUに送ります。走行支援ECUは、ステレオ画像処理ECUとミリ波レーダからの情報に基づき、PCSシステムを制御します。この走行支援ECUは、PCSシステムだけでなく、レーダクルーズコントロールシステム(全車速追従機能付)、レーンキーピングアシストシステムも制御します。

 デンソーは、このステレオ画像処理ECUをトヨタ自動車、NECエレクトロニクス株式会社と共同で、走行支援ECUをトヨタ自動車と共同で、新しく開発しました。

 また、ミリ波の変調方法を改良することにより、前方ミリ波レーダの近距離での検出性能を向上させました。走行支援ECUからの指令にもとづきモータを制御し、シートベルトの巻き取りを行うプリクラッシュシートベルトECUについては、回路部分の統合や、ケース、組み付け方法の改良により、体積で従来の約4分の3、重さで約半分以下という小型軽量化を実現しています。

新エアコンシステム

 快適分野では、高効率を達成しながら、乗員一人ひとりに、より快適な空調を提供するエアコンシステムを開発しました。このエアコンシステムは、新しい製品として、表面温度の分布を検出することができる世界初の赤外線センサ(マトリクスIRセンサ)【注3】と、高度な制御と小型化を実現したフロントエアコン用HVACユニット、後席の静粛性を実現したリヤエアコン用クーリングユニット、車室内の酸素濃度低下を抑える酸素濃度コンディショナーを採用しています。

 このエアコンシステムの特長は、次の通りです。

  • 前席、後席における4席、それぞれの温度を、独立して制御可能。
  • マトリクスIRセンサが後席乗員の表面温度変化を検出することにより、それぞれの乗員の状態に合わせて、自動的に空調温度や風量を調節可能。
  • フロントエアコン用HVACユニットに、高効率部品(エバポレータ、ヒータ、モータ)と新規構造を持つフィルムドアを採用。これにより、エアコンシステムの高効率化と低騒音化、体積で約20%の小型化を達成。また、このフィルムドア構造が、運転席側と助手席側、それぞれでの風量制御を実現。
  • リヤエアコン用クーリングユニットの吸気口に、新しく開発した多孔質樹脂材料から構成されるダクトを採用。このダクトが、送風騒音を低減し、後席での静粛性を実現。
  • 酸素濃度コンディショナー中の酸素富化膜により酸素濃度を増加させた空気を供給することにより、車室内の酸素濃度低下を抑制。

スマートエントリー&スタートシステム用カードキー

 利便分野では、スマートエントリー&スタートシステム用に、カードキーを開発しました。このカードキーは、回路基板をインサート成形することにより、世界最薄の厚さ3.35ミリメートルと、世界最高レベルの曲げ強度、世界で初めての回路部完全防水構造を実現しました。これにより、財布やカードケースへの収納が容易になり、同時に、曲げや折れ、浸水に対する耐性を向上しています。

TFT液晶ディスプレイ付メータ


TFT液晶ディスプレイ付メータ

 メータは、TFT液晶ディスプレイを採用することにより、様々な情報を見やすく、運転者に提供しています。デンソーは、メータ用TFT液晶ディスプレイ用としては、世界で初めて、高輝度発光ダイオード(LED)を使用したバックライトユニットを開発しました。このバックライトユニットは、環境負荷物質である水銀を含まず、従来の冷陰極管に比べて、消費電力を約20%低減することができるため、車の低燃費化にも貢献します。

リモートセキュリティシステム

 日本市場向けには、レクサス用テレマティクスサービス「G-Link」と連携した世界で初めてのリモートイモビライザー機能を持つ、リモートセキュリティシステムを、トヨタ自動車と共同で開発しました。リモートイモビライザーとは、イモビライザー【注4】機能のあるキーと車両が一緒に盗難にあった場合、情報センターが車両に指令を送り、車両駐車後、エンジンが再起動できないようにする機能です。リモートイモビライザーは、安全性を考慮し、走行中に情報センターからの指令を受信しても、確実に駐車されるまでは作動しません。この他に、ドライバーが、携帯電話により、センター経由で、ドアロックやハザードランプ、パワーウインドウを遠隔操作することができるリモート操作機能も追加しました。

傾斜検出機能付イナーシャセンサ

 さらに、主に欧州市場向けに、イナーシャセンサと傾斜センサを世界で初めて一体化した、傾斜検出機能付イナーシャセンサを開発しました。イナーシャセンサは、ビークル・スタビリティー・コントロール(VSC)【注5】用に走行時に、加速度と角速度から車両姿勢を検出します。傾斜センサは、キーオフ時の車両傾斜から車両盗難を検知します。従来、これらの情報を検出するためには、二つのセンサが必要でしたが、デンソーは、一つのセンサで全ての情報を検出可能としました。さらに、この新しいセンサは、従来の傾斜検出機能のないのイナーシャセンサと比較しても、体積で約25%の小型化を実現しています。

 デンソーは、今後も、環境、安全、快適、利便の4つの分野に注力し、新しい技術の開発に取り組んでいきます。

<注釈>

【注1】新しいPCSシステムは、日本と欧州で販売されるレクサスLS460に搭載されます。

【注2】走行支援ECUは、DSS(ドライバー・サポート・システム)コンピュータとも呼ばれます。

【注3】マトリクスIRセンサは、日本、欧州、オーストラリアを除いた世界各国で販売される一部のタイプのレクサスLS460に搭載されます。

【注4】イモビライザーは、キーの認証コードが車両本体の電子制御装置により認識された場合のみ、エンジンの始動を可能にする、自動車盗難防止システムです。

【注5】VSCは、オーバースピードでコーナーに侵入したり、急激なハンドル操作などによって車両姿勢が乱れた際に、ブレーキとエンジン出力の調整により、横滑りを防ぎ、走行安定性を確保します。

以上