DRIVEN BASE

会長CEO MESSAGE

常に外を見つめ、デンソーらしさを進化させながら
熱量高く、壮大な社会課題に挑む

明るい話題が戻ってきた2022年度

2022年度を振り返ると、新型コロナウイルス感染症で停滞していた経済活動や各種イベントが再開され、人々の交流や活気が戻りつつある中、サッカーW杯やWBCでの日本代表の活躍など明るい話題が増えた1年でした。当社としても、経営改革や体質強化活動に一定の手応えを感じながら、業績面でも売上収益・営業利益ともに過去最高を達成することができました。

とりわけ当社にとって明るいニュースは、QRコード®がIEEE コーポレートイノベーション賞を受賞したことです。この賞は、革新的な技術や製品によって世界に大きな影響を与え、電気・電子分野の発展に寄与した企業・団体に贈られる世界で最も権威ある賞の一つであり、1985年の創設以降、世界の名だたる企業・団体が受賞しています。バーコードに替わる「大容量・高速・高信頼性」の次世代コードとして、1994年に誕生したQRコード®は、製造現場での在庫管理という当初の利用シーンから大きく飛び出し、今では電子チケットやキャッシュレス決済など世界の至るところで利用されています。コロナ禍においても、ワクチン接種証明に使われていたのは記憶に新しいところではないでしょうか。

QRコード®に体現されたデンソーらしさ

QRコード®の誕生秘話や開発エピソードにはここでは触れませんが、グローバルな自動車部品メーカとして、世界中のサプライヤー様と日々大量の部品・材料をやり取りしながら生産活動を営む中で、膨大なデータを取り扱ってきた当社だからこそ、世に先駆けて情報技術の進化をリードすることができたのではないかと思います。また、この受賞は、QRコード®の技術的な価値や学術的な意義を振り返る機会になると同時に、その背景に息づくデンソーらしさを改めて見つめ直すきっかけにもなりました。当時のモノづくりが大量生産から多品種少量生産へと移行し、企業間電子取引が普及しようとする時代の流れを先読みする力に加え、絶対的に信用できるコード開発に向けた徹底的な研究やベンチマーク、そして普及に向けた特許無償開放による世界中の仲間との協業など、随所に社是の精神が体現されています。「時流に先んず」や「和衷協力」など、デンソーらしさが凝縮されていたからこそ、真に役立つ技術として、人と社会の共感を呼び、世界中に受け入れられたのだと思います。

デンソーらしさを取り戻し、いざ未来に向けて

このデンソーらしさを何とか取り戻したい、私自身その一心で、社長として舵取りをしてきました。CASEをはじめとする100年に一度の大変革期に加え、品質問題やパンデミック、材料不足や価格高騰などが重なった激動の8年間は、自分たちの原点に立ち返り、創業の精神を取り戻す闘いでもありました。事業拡大の中で知らず知らずのうちに薄れてしまっていた品質へのこだわりやお客様第一の姿勢、仲間に寄り添う風通しの良い組織風土などについて、職場ごとに本音の対話を重ね、一人ひとりの意識・行動が変わるまで愚直に取り組みを続けてきました。

全社一丸となった取り組みの結果、会社成長の大前提である経営基盤や風土は着実に固まってきており、2035年の事業ポートフォリオを描くなど未来への見通しも立ってきたと感じています。経営指標としても、2023年度は、売上収益6.7兆円、営業利益率9.0%、ROE9.3%を見込んでおり(2023年度第1四半期決算時点)、2025年中期方針として掲げた営業利益率10%、ROE10%超という目標も射程圏内に入ってきました。ここまで来られたのは、日頃から当社を支えてくださるカーメーカをはじめとするお客様や世界中のサプライヤー様のみならず、厳しくも温かく応援してくださる株主や投資家の皆様のお陰にほかなりません。皆様の長年にわたる応援の結果、当社の時価総額は2015年の約3.9兆円から2023年の約7.6兆円まで、8年間で約2倍になりました(2023年6月末時点)。良い時もそうでない時も、当社を見放さずに期待し続けていただいたことに深く感謝するとともに、これからも明るい話題を提供し、皆様の期待に応え続けようと固く決意する次第です。

常に外を見つめ、社会の役に立ち続ける

今世界が直面しているカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといった壮大な社会課題に挑むにあたり、当社は社会に欠かせない5つの流れ(人流、物流、エネルギー流、資源流、データ流)に着目し、それらをつなぎ、統合制御することで、幸せが社会に広がっていく「幸福循環社会」の実現を目指しています。モビリティ領域で培ってきた「メカ・エレクトロニクス・ソフトウェアの三位一体」という強みを磨き、ソサエティ領域全体に広げることに加え、QRコード®のような先進的な情報技術の蓄積を活かすことで、デンソーならではの価値創造に挑戦していきます。そのためには、常に外を見ること、社会を知ることが極めて重要です。私自身も、会長CEOとして、社内の執行を全力でサポートしつつ、社外との関わりをより一層強めているところです。自動車業界においては、現在任務を仰せつかっている一般社団法人日本自動車部品工業会の会長としても、中堅・中小企業との 連携を密にしながら、サプライチェーン全体の競争力強化に貢献する取り組みをリードしていく所存です。また、自動車業界以外とのつながりも強固にしながら、異業種の知見や多様なお客様の声を社内に還元していきます。当社の成長はお客様に鍛えていただくことで成り立っているということを肝に銘じ、お客様との積極的な対話を通じて、真に社会の役に立つものを生み出す会社であり続けたいと思います。

社会やお客様の笑顔のために、新体制が熱量高く、果敢に挑戦

世界を見渡せば、この先も経営環境は依然として厳しい状況が続きますが、先行き不透明な時代だからこそ、企業としての体力・気力・知力が普段以上に必要です。熱量の大きな会社でなければ、変化に立ち向かい、失敗を恐れず、果敢に挑戦することはできません。デンソーらしさを取り戻しつつある今、2023年6月に満を持して襷を託した新体制には、もっともっと熱量を高め、スピーディに突き進んでほしいと思います。その熱源は、グローバルデンソーの仲間一人ひとりの情熱にほかなりません。新体制のもと、情熱にあふれた仲間たちが、いい意味でぶつかり合う熱量の大きな会社であれば、必ずや社会課題を解決し、笑顔あふれる未来をつくっていけると確信しています。どんな変化に晒されようとも、常に自分たちの原点を大切に、時代に応じてデンソーらしさを進化させながら、社会やお客様の笑顔のために邁進していく所存です。株主・投資家の皆様におかれましては、引き続き変わらぬご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

2023年9月

代表取締役会長  CEO  有馬浩二