DRIVEN BASE

”私”を受け入れてくれる環境だから、”私ならでは”の価値を生み出せる

先輩社員インタビュー:鬼丸 禎史さん

2021年にデンソーに入社し、情報通信開発部でソフトウェアエンジニアとして活躍されている鬼丸さん。カーナビを操作するスマホアプリの開発や、クルマの中と外を繋ぐサービスを開発しています。大学時代に負った重度の障がいを受け止め、逆にその状況をプラスの発想に変えて仕事に取り組む鬼丸さんが、「私だからこそ生み出せる価値」について語ります。

略歴

2013年
大学入学直後、海水浴にて浅瀬に飛び込んだ際に頸椎を損傷。 肩から下が自由に動かせないような重度の障がいを負い、車椅子での生活へ

2014年
怪我の治療やリハビリを経て復学し、翌年4月に学部を変更(水産学部→工学部)

2020年
デンソーに出会い、応募。

2021年
デンソーへ入社。「ことづくり」の技術者として活躍中。

講師としても活躍中!
ifLinkの授業風景(動画)はこちらから: 東海大学でifLink体験授業『バーチャルカーを動かしてみた!』

この会社なら活躍できるかもしれない

―就職活動はどのように進められていたのですか?

大学院1年生になり就職活動を始めた頃、私は障がいのこともあって、地元の福岡で働くことを希望していました。
しかし、いざ就職先を探し始めるとバリアフリー対応や車いす社員が在籍している地元企業は少なく、自分自身が安心して働けると思えるような会社を、見つけることができずにいました。


―そうだったのですね。デンソーに興味をもたれたきっかけはなんですか?

少しでも可能性を広げようと、県外企業を調べていた時、目にしたのがデンソーの求人票の中にあった「障がいのある学生の皆様へ」と題した資料です。その資料には、障がい学生へのメッセージや在籍する障がい社員の雇用状況をはじめ、具体的な支援の内容が記載されていました。

特に、車いすでも使用できるオストメイト対応トイレやスロープ設備などが紹介されていたことは、将来に不安を感じていた私をとても安心させるものでした。このような資料は他社では見たことはなく、「重度の障がいがある自分でも、この会社なら活躍できるかもしれない」と、希望を感じたことを今でも覚えています。

    • オストメイト対応トイレ

    • スロープ設備

私という人間を深く理解したいという気持ちが伝わってきた

―それで応募されたんですね。

はい、その後、迷うことなくデンソーに応募しました。驚いたのは、面接とは別に私の障がいの状況や配慮すべきことを確認する場を設けてくれたことです。他社のインターン参加や選考も進めていましたが、このような対応はデンソーだけでした。働く上でサポートの希望を持てたことはもちろん、私という人間を深く理解したいという気持ちが伝わってきて、嬉しかったです。


―不安は何もなかったのでしょうか?

正直にいうと、内定をいただいた後も、入社について具体的に考えると不安な思いはありました。入社に向けた準備のため、採用担当者と何度も連絡を取り合いましたが、特に印象に残っているのは現地訪問です。


―職場を見学いただいたのでしょうか?

会社構内やオフィスも訪問させてもらいましたし、入居予定の寮も確認させていただきました。

当日は、事前に準備されていたチェックリストに沿いながら、私の行動範囲と思われるエリアのすべてを確認していきました。オフィス周辺はもちろん、駐車場や食堂など一日の会社生活を辿るような内容で支障がないか一つ一つ丁寧に確かめました。食堂では車いすを使用されている先輩社員とともに食事や懇談をさせて頂く機会も設けて頂き、とても嬉しく思いました。また、寮に訪問した際は、部屋内はもちろん、すべての出入り口の開閉動作、洗濯機の使用やごみ出しなど、日常の些細な動作まで支障の有無を確認いただきました。その内容を踏まえて、入社までに必要な改修をしていただきました。使用に少し支障のあった縦型の洗濯機が、私専用として横型のドラム式洗濯機に換えられていたのには驚きました。ここまでしてもらって良いのだろうかと恐縮しました。

業務の遂行だけでなく、一人の社会人として生活を送ることを考えてくださったのが嬉しかったです。
このような準備を経て、漠然と抱いていた不安は安心に変わり、楽しみに入社日を迎えることができました。

    • 支障なく会社生活を送れる環境

    • 寮に準備されたドラム式洗濯機

障がい者の「希少性」を活かした製品開発

―入社から約半年が経過した現在の心境を教えてください。

ありがたいことに、私を肯定的に受け入れてくれる同期や同僚、上司など周りの人にも恵まれ、毎日とても充実しています。

私が所属している情報通信開発部は、「ことづくり」と言われる、サービスを作っている部署です。

NaviConという、カーナビをスマホから操作するアプリの開発や、車と外部のサービスを繋ぐHubとなる新しい事業の実装を進めています。様々なユーザーを対象とした製品開発のため、車いすを使用する障がい者である私の視点も健常者には気づかない発想を開発に活かすことができるという点で重要だと考えています。

そういう意味で、私は自分自身を「希少人材」だと思っています。正直、技術的にはまだまだ分からないことばかりですが、会社もこの希少性を活かした製品開発について、私に大きく期待してくれていると思います。障がい者であることをプラスに捉え、特に障がい者ならではの目線や考え方について、積極的に発言し提案することで、貢献しつづけたいと考えています。

デンソーに入社した理由の一つでもある、「ユニバーサルなモビリティー社会の実現」が今の私の目標です。

    • 障がいを持っているからこそ気付けることもある

    • 鬼丸さんが担当されているアプリ「NaviCon」

※所属部署、役職は取材当時のものです。

上司からのメッセージ:鬼丸さんに期待すること

学生時代に障がいを負うという大きな環境変化を受け止め、その事を是として前向きに取り組んでいる姿は逞しく且つ素晴らしいと思います。

また、ソフトエンジニアとしてのスキルも高く、テレワークという環境下では障がい者という事を忘れてしまう働きぶりです。

ご自身で車を運転されるので、鬼丸さんならではの視点で現状の車が抱えている課題に気づいておられることでしょう。自らの発想と技術で世の中の全ての人が幸せになれるユニバーサルなモビリティ社会の実現を目指して頂きたい。

持ち前のバイタリティとコミュニケーション能力を活かし今後の成長と活躍に期待しています。

採用担当者より

鬼丸さんと初めて会い、障がい内容について聞き取りをさせて頂いた際、私は、鬼丸さんを是非デンソーにお迎えしたい!と思いました。その理由は、大学1年生という将来に大きな希望を抱く時期に、重度の障がいを負うという、大変な事故に遭われショックを受けられたはずなのに、その境遇を全く感じさせない人間としての強さと社会移行に対する熱意・覚悟を感じたからです。このような経験をし、そして立ち直った方として大きな期待を感じたことを覚えています。

しかし、いざお迎えしようと考えると独身寮も含めデンソー構内のバリアフリーの現状は決して安心できる状況にはありませんでした。鬼丸さん自身も不安を感じておられたと思います。内定が決まってから入社までの半年間でお互いを知り、理解し合うことができたことは、とてもよかったと思っています。コロナ禍であったにもかかわらず鬼丸さんには遠方より来社頂きました。自分にできること、できないこと、改善して欲しいこと、自分で工夫すること、これらを素直に確認し合う姿勢が鬼丸さんにはありました。

また、工具の使用について私が質問した時です。鬼丸さんからビデオが届き、開いてみると、日頃の研究室での作業風景が映っていました。様々な道具を扱う際の様子や心配点が具体的にわかり、仕事を進めるうえで必要な準備を進めることができました。

私は鬼丸さんに安心して入社して頂きたいと考え対応してきました。障がい者一人一人のニーズは異なりますが、この根本的な考え方は今後も変わることはありません。デンソーの一員として、将来の仲間が安心して入社できる対応を、これからも続けていきたいと思っています。