DRIVEN BASE
intellectual property

知的財産

基本的な考え方

「攻めと守りの知財戦略」で未来を拓

近年、電動化や自動運転技術の進展や、SDV(Software Defined Vehicle)の登場により、クルマはソフトウェアを中核とする製品へと進化し、他業界との連携も広がっています。こうした変化の中で、企業が持続的に成長するためには、技術やアイデアを守り活かす「知的財産(IP)」の重要性が高まっています。
デンソーは創業以来、環境に配慮した技術開発に取り組み、特許などで成果を保護してきました。今後は、複数のIPを組み合わせて新たな価値を創出する「攻め」の活動にも注力し、協業や標準化を通じて価値の共創を目指します。

知的財産戦略

デンソーは「攻めと守りの知財戦略により、知財経営を実現する」というビジョンを掲げ、全社員がIPへの理解を深め、事業戦略と自然に結びつけることを目指しています。具体的には、「戦略」「ガバナンス」「内外対話」の3つの柱で知財活動を強化しています。

  • 知財経営の実現に向けた目標

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第一の柱:知財戦略の強化

デンソーは、技術開発の方向性として、企業成長のドライバーとなる「モビリティの進化」「基盤技術の強化」「新価値の創造」3つの領域に注力しています。各領域における事業環境や技術特性に応じた知財戦略を策定・実行することで、持続的な競争優位の確立を目指すとともに新たなビジネスにも挑戦しています。

デンソーは、SDVや電動化・自動運転などの成長分野において、特許やノウハウを活用し、技術価値の最大化を図っています。モビリティ領域では、センシングやエネルギー管理などのIPをライセンスや協業を通じて展開し、「特許活用率」により事業貢献度を定量的に評価していきます。基盤技術では、車両制御から通信・セキュリティまで多機能を担うソフトウェアIPや、変化の激しい市場に対応するためのオープン&クローズ戦略を活かした半導体IPを事業戦略に応じて最適に活用しています。新価値創造では、IPL(IP Landscape)を活用し、事業構想段階からIPを組み込んだ戦略を推進し、「戦略採用率」をKPI化しました。IPを通じて、持続的な成長と社会への貢献を目指しています。

<知財ポートフォリオの構築と特許データの開示の仕組み>
個別の事業の戦略策定強化に加え、社会課題解決につながる価値創造ストーリーや技術開発方針から目指すべき知財ポートフォリオを全社視点で構築することが重要と考えています。当社が注力する技術開発から重要なIPを生み出す知財活動と、社会に対して提供する価値との因果関係(価値創造パス)を明確化し、提供価値ごとに当社の特許価値スコアで検証すると、環境領域では、2014年比で約2倍、安心領域では、2014年比で約1.5倍に増加し、着実に成長していることが分かります。

技術・知財における価値創造パス(抜粋)

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  • 【環境領域】電動車関連特許価値スコア

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  • 【安心領域】ADAS関連特許価値スコア

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さらに、デンソーでは重要な経営資源である特許データを開示し、全社員が常に最新情報にアクセスできる仕組みを構築することで、特許への関心を高め、データを積極的に活用した知財戦略の浸透を図っています。

  • 先行指標
    将来のポートフォリオ傾向を示す指標、社会課題を解決する新価値創造などの領域で重視

  • 現在指標
    現在のポートフォリオの強さを示す指標、モビリティ、ソフトウェア、半導体領域といった当社の成長領域で重視

  • 遅行指標
    ポートフォリオの実績を示す指標、エンジン関連製品など今までの当社の成長を支えてきた製品からなる成熟領域で重視

  • 知財の指標化項目(一例)

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第二の柱:ガバナンス体制の構築

デンソーは、事業ごとに知財戦略会議を開くとともに、特許に限らず幅広いIPを対象に全社横断で戦略を検討する知財戦略会議を新設し、知財体制・予算・人材なども含めた議論を通じて、より実効性の高い知財戦略を推進していきます。
また、「特許活用率」「戦略採用率」など独自KPIを導入し、IPと事業の連携を可視化・強化することで、目標達成に向けた取組みを全社一丸となって進めています。

第三の柱:内外対話の強化

知財経営を実現に向け、知財部門だけでなく、役員や事業戦略検討メンバー、営業・調達など、社内全体でIPへの理解を深め、誰もが自然に事業戦略の中にIPの視点を取り入れられるよう、知財リテラシーの向上に取り組んでいます。
社内では、戦略議論の機会を増やす、技術展示会での紹介、全社員への定期知財教育等により、基本的な知識の定着を図っています。さらに、社外との対話により得られる気づきは、より良いIP戦略につながると考えています。IPを重要な経営資源として活かすために、私たちはこれからも社内外の対話を深め、知財経営の実現に向けて取り組んでいきます。

推進体制

グローバル知的財産体制の強化

海外での事業展開を支えるべく、北米、欧州、中国の開発・設計拠点内に知的財産組織を設け、現地発明に関わる知的財産権の取得・活用や、他社知的財産権の調査を強化しています。北米・欧州拠点では現地の特許弁護士を採用して特許係争の支援を、中国拠点では模倣品対策や商標侵害対応によるブランド保護強化を行っています。また、知財マネジメント上のグループ全体および各地域の課題解決とガバナンス強化を目的として「グローバル知財会議」を定期的に開催しています。

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他社知的財産権の尊重

デンソーは、他社の知的財産権に係る問題は、企業価値に関わるものとして重要品質問題と同等に考えています。開発段階より他社の知的財産権を調査し、自社製品・サービスが第三者の正当な知的財産権を侵害することがないよう、明確なルールを定め、その順守を徹底しています。

第三者による権利侵害行為の排除

デンソーは、保有する知的財産権に対する第三者による侵害行為に関しては、適切かつ正当な権利行使を行っています。
この活動は、特許侵害だけでなく、たとえば模倣品対策においても積極的に行っています。
商標コピー品等の模倣品は品質に問題があるものが多く、デンソー製と信じてご購入いただいたお客様が不利益を被る可能性があります。2005年からは模倣品対策として、行政機関・税関と協力した摘発活動を継続しており、北米・欧州・中国の海外拠点とも連携しています。

今後の取り組み

技術革新のスピードが速く、変化の激しい事業環境だからこそ、知的財産を価値創造と競争力の源泉と位置付け、「攻めと守りの知財戦略」を強化する知財経営を推進することで、デンソーの持続的成長と企業価値向上を実現していきます。