DRIVEN BASE

日タイ連携 リーンオートメーションシステムインテグレータの育成

    • [SDGs-9]産業と技術革新の基盤をつくろう
    • [SDGs-4]質の高い教育をみんなに

デンソーは従来から自社の生産工程において、無駄を徹底排除した経営効率の高い自動生産システムである「リーンオートメーション」を取り入れてきました。このノウハウを活かし、タイ国内で生産設備やFA機器などを取り扱うシステムインテグレータ*1を育成する実証事業をスタートさせました。

*1 様々な機器を組み合わせ、効率的な生産ラインの設計を行う企業の総称。

タイの産業

タイでは、就業労働人口の減少・人件費の高騰により、産業構造の転機を迎えています。タイの製造業をリードしてきた日系企業は、手作業主体のモノづくりを高度な自動機主体のモノづくりへ転換し、生産性を向上させていくことが、生き残りのための鍵となります。

また、これまでは自動化の対応を日本の技術者が行っていましたが、それを現地化させていくことも大きな課題となります。タイでは自動化システム(設備、ラインなど)を企画・設計から製作、導入、保守まで行うオートメーションシステムインテグレータが希少的存在となっており、今後、いかに育成、増強していくかが重要です。

ともに目指す姿

タイにおけるリーンオートメーションシステムインテグレータ(以下 LASI)の育成・増強を行うことで、日本流のリーンオートメーションを浸透させ、タイの企業の競争力強化に貢献します。この活動を通じ、タイにおける自動化エンジニアリングの質も高めていきます。

また、今回の実証実験では、日本の経済産業省、タイの工業省の支援の下、タイ国家イノベーション庁、大学、教育機関、地場のシステムインテグレータ、株式会社野村総合研究所、株式会社レクサー・リサーチとコンソーシアムを組むことで、産官学が一体となり、強力な推進力のもと、中長期的な普及・定着を目指していきます。

タイでLASIが増えることにより、日本製産業機器の活用度が高まり、日本の産業貢献にも結び付く、そんな日本とタイのwin-winビジネスの可能性を追求していきます。

    • 実証事業推進に向けたタイ工業省との基本合意書調印式(左より ソムチャイ工業副大臣、ゴブチャイ局長、当社常務役員 杉戸、寺川商務官)

      実証事業推進に向けたタイ工業省との基本合意書調印式
      (左より ソムチャイ工業副大臣、ゴブチャイ局長、当社常務役員 杉戸、寺川商務官)

    • ロボットスクールで学ぶタイの若いエンジニア

      ロボットスクールで学ぶタイの若いエンジニア

具体的な取り組み

オープンなトレーニングセンターの設置

工業省内の施設に、リーンオートメーションを体系的に学ぶことができるトレーニングセンターを設置しました。そこでは座学を学ぶ教室と、実技を通して学ぶための生産用設備を設置し、実践的な学びの場を提供しています。この生産設備は最新の自動化機器や情報システムで構築されており、過去から培ってきたリーンオートメーションの考え方に加え、最新の自動化・情報技術を同時に学ぶことができるように構成されています。また、タイ製造業関係者への周知と利活用の利便性を図ることはもちろん、広く日系の産業機器メーカーへの恩恵を狙うため、特定の企業の機器を用いるのではなく、オープン性を持たせた設備としています。

    • トレーニングセンター 外観イメージ

      トレーニングセンター 外観イメージ

    • 実技用の生産用設備

      実技用の生産用設備

LASI教育プログラム・カリキュラムの開発

リーンオートメーションの考え方から実現プロセスを具体的に学んでもらうため、全11講座、座学・実技合計120時間の教育プログラムを開発しました。教育カリキュラムは、デンソーが培ってきた知見の体系化はもとより、タイの教育機関、大学とも連携し、半年以上かけて一緒に開発を進めてまいりました。単に日本から教材を輸入するだけでなく、タイの方々と一緒に作り上げるプロセスを持つことで、技術移転や活動の拡大を円滑に進める意図があります。

カリキュラムの内容は、考え方を座学で学び、それを実際の設備を使った実技で理解を深める構成となっています。受講生は、自ら設備を分析して問題点を発見し、どのように設計に落とし込むかという一連の改善活動を行い、リーンオートメーションを体系的に学ぶことが可能です。

  1. 生産システム概論

  2. リーンマニュファクチャリング概論

  3. リーンマニファクチャリング実習

  4. リーンオートメーションシステム設計

  5. TPM(Total Productive Maintenance)

  6. TPM実習

  7. リーンロボット操作実習

  8. 電気回路(PLC)設計実習

  9. 生産システムシミュレータ実習

  10. 設備シミュレータ実習

  11. F-IoT実習(Factory IoT)

LASI教育の実施

教育は、将来、タイ国内での積極的な展開や普及を視野に入れ、オープンな場で実施しており、2018年4月から12月末までに、約3ヶ月に渡る教育を3クール行います。また実証事業完了後、LASI教育の運営をタイサイドへスムーズに移管し、継続的に教育を実施してもうらため、教育の運営や管理はタイ政府関係者と連携しながら進めています。

    • 座学の様子

      座学の様子

    • 生産設備を用いた実技の様子

      生産設備を用いた実技の様子

教育トレーナーの育成

中長期的なタイでの自律的な発展を目指して、積極的にタイ人のトレーナーの育成を実施します。教育プログラムの実現には14名のトレーナーが必要であり、2018年は7名の日本人トレーナー、7名のタイ人トレーナーで教育を運営していますが、2019年にはタイ人トレーナーを10名まで引き上げ、段階的にタイに移管する計画で育成を進めていきます。

タイにおける反響

本取り組みは、タイ国内において非常に高い関心と評価を得ています。

タイ工業省からの要請で出展をした、工業省主催のThailand Industrial Expo 2018では、工業大臣からプラユット首相へ「デンソーのリーンオートメーションの考え方をタイにおける自動化の柱とする」と報告されました。

また、2018年7月には、ソムキット副首相がデンソー西尾工場を訪問しました。それを伝える現地の新聞が、デンソーを”自動化の伝道師”として紹介するなど、タイ国内での期待が日に日に高まっています。

    • Thailand Industrial Expo 2018 デンソー LASIのブース

      Thailand Industrial Expo 2018 デンソー LASIのブース

    • プラユット首相(中央)に説明するデンソーのティーラワットプロジェクトマネージャー

      プラユット首相(中央)に説明するデンソーのティーラワットプロジェクトマネージャー

    • 2018年8月15日付 バンコクポストが”自動化の伝道師”として紹介(左)ティーラワットプロジェクトマネージャー (中央)有馬社長 (右)ソムキット副首相

      2018年8月15日付 バンコクポストが”自動化の伝道師”として紹介
      (左)ティーラワットプロジェクトマネージャー (中央)有馬社長 (右)ソムキット副首相

今後に向けて

実証実験を通じ、実践力ある地場のシステムインテグレータを育成することで、タイにおける自動化領域の競争力を強化し、地場製産業の自動化推進の加速に貢献していきます。また、日本流リーンオートメーションがグローバルに広がることで、日本流ものづくりのブランド化、および中小企業を含めた日本の産業機器におけるビジネス拡大を目指します。