第45回技能五輪国際大会 トヨタグループ出場選手対談 トヨタ自動車×デンソー モノづくり企業が共に挑む技能五輪

8月22日(木)~27日(火)にロシアのカザンで開催される第45回技能五輪国際大会。世界中の若手技能者が集まり、スキルを競い合います。日本選手団の一員として、トヨタ自動車株式会社 北本悠真選手(電子機器組立て)、株式会社デンソー 山下慎三朗選手 (製造チームチャレンジ)がこの大舞台に挑みます。
会社は違えど技能五輪選手として日の丸を背負うという共通項を持つ2人に、技能五輪にかける思いや大会を控えた心境を語り合っていただきました。
北本 悠真 Yuma Kitamoto
1998 年生まれ。トヨタ自動車株式会社 技能者養成所所属。松山工業高校時代に第11 回若年者ものづくり競技大会に出場し、電子回路組立てで金賞および厚生労働大臣賞を受賞。2018 年、第56回技能五輪全国大会 電子機器組立てで銀賞を受賞。
目指す人材像は「結果を残し、説得力のある強い人」
山下 慎三朗 Shinzaburo Yamashita
1995年生まれ。株式会社デンソーコアスキル開発部所属。2015年、第53回技能五輪全国大会電子機器組立てで敢闘賞。2016年、第54回技能五輪全国大会電子機器組立てで敢闘賞。
目指す人材像は「現状に満足せず、努力し続ける人」。
技能五輪を通じて世の中のモノが動く原理がわかる
山下: 同じトヨタグループの選手ということもあって、北本さんとは何度か顔を合わせてますね。技能五輪に挑戦しようと思ったきっかけは何だったんですか?
北本: 2016年に山形県で行われた技能五輪全国大会を見学したことがきっかけです。当時、僕は工業高校に通っていて、若年者ものづくり競技会(※1)の電子回路組立てに出場したこともあったんですが、技能五輪のレベルの高さに驚きました。
山下: 若年者ものづくり競技会の電子職種課題、見たことあるな。プログラムの基板を組み立てるんですよね。
北本: そうです。若年者ものづくり競技会は簡単な基板製作とプログラミングだけなのですが、技能五輪の電子機器組立て(※2)は本当にたくさんの要素が求められる。そのレベルの高さに、自分も挑戦してみたいと思ったんです。あと僕はパソコンで音楽をつくっているのですが、音楽と電子って関係が深くてお互いの知識が役立つんですよ。自分の趣味と技能五輪の競技がつながっているという点にも面白さがあります。
※1…若年者の就業促進を目的に、企業等に就業していない20歳以下の若年者を対象に開催される技能競技大会。
※2…電子機器の設計・試作から製品の製造、保守に至るまでの過程に必要な知識と技能を競う職種。


山下: 僕は2014年にデンソー工業学園(※3)に入学して、技能五輪の選手選考を通過したことがきっかけ。訓練を積むようになってから、自分にできることが増えていくことにうれしさを感じます。
北本: 山下さんは今回の国際大会は製造チームチャレンジ(※4)で出場されますが、もともとは電子機器組立ての選手なんですよね?
山下: そうなんです。製造チームチャレンジは3人1組でエントリーするのだけど、僕は電子分野の担当。電子機器組立ては、訓練を通じて世の中にある電子機器がどのような構造になっているのか分かるし、修理もできるようになる。過去の自分にはできなかったことができるようになって成長を感じますよね。
北本: スマートフォンや自動車の制御技術をはじめ、生活の中で電子機器ってあらゆるものに使われてますもんね。僕も製品が動く原理を理解できることに醍醐味を感じます。本当にいい競技ですよ、電子機器組立ては。
※3…株式会社デンソーが運営する職業能力開発促進法に基づいた認定職業訓練を行う企業内学園。
※4 …生活に役立つ商品開発を行う「メイン課題」と、大会当日に公表される「未公開課題」に3人1組で取り組む職種。製作技能、設計技術、制御技術と幅広い知識とスキルが必要。
やっぱりライバル?それでも僕たちは「同志」

北本: 僕、デンソーの電子機器組立て選手だった犬飼英明さんを尊敬しているんですよ。
山下: 僕の先輩ですよ。北本さんが見に行った山形県の全国大会で、犬飼さんが圧勝で金メダル獲ったもんね。
北本: 圧倒されましたよ。僕にとって犬飼さんは、技能五輪に挑む上での目標なんです。
山下: 技能五輪において、トヨタ自動車とデンソーはやっぱりお互いに意識し合う存在だと思ってます。国内大会だと一番のライバルじゃないかな。


北本: 僕が電子機器組立てで銀メダルを獲った2018 年の沖縄大会でも、金メダルはデンソーの永谷 龍弥選手でした。優勝候補だった永谷選手に勝とうと訓練してきましたが、超えられなかった。それでも今回の国際大会で金メダルを獲れば、永谷選手の壁を超えることができると思っています。
山下: その通りだね。トヨタグループの枠組みでいうと、同じ職種同士は合同訓練会がありますよね。全国大会前に行われるので、選手はかなりピリピリしてるけど。
北本: 合同訓練会で自分の実力レベルがはっきりと分かりますから。
山下: それでも訓練会後に選手同士で話してみると、やっぱりみんな自然と仲良くなれるからうれしいです。
北本: みんな同じような進路で、同じような経験をしてきているメンバーなので、会社は違っても「同志」だと感じますよね。
山下: 国際大会は日本選手団として戦うので、ますますチームだと感じるでしょうね。
会社のサポートに感謝 技能五輪選手として貢献したい

北本: いよいよ国際大会が迫ってきていますね。プレッシャーは感じていますか?
山下: 朝起きた時とかボーっとしている時に、自分でもよくわからない緊張が押し寄せくることはあります。会社に来て訓練を始めてしまえば没頭できるので、逆に落ち着くんですけど。
北本: それ、僕も一緒です(笑)。無意識のうちにプレッシャーを感じていると思います。
山下: 平常心を保つためには、訓練でやってきたこと以上の結果を求めないことが大事だな、と。訓練でやっていないことをやろうとすると、ミスが起きる。訓練の通りにやればいいんだって言い聞かせれば、プレッシャーはやわらぎます。
北本: 僕は競技が始まる直前が一番緊張しますね。それでも始まってしまえば全力でやるしかないので、緊張は自然とおさまります。緊張している自分を否定せず、受け入れているのがいいのかな。

山下: 会社の期待を感じることはありますか?僕たちの研修所には、自分たちの名前が入った応援幕が掲げられているんですよ。訓練漬けの毎日ですが、皆さんにサポートしてもらっているんだなと感じます。
北本: トヨタ自動車の技能五輪選手は、引退後に配属される職場が決まっているんです。僕の職場の方も応援してくれている。僕たちが技能五輪に出場するために、会社はすごく投資をしてくれている訳じゃないですか。支援してもらった分、しっかり結果を残して、会社や応援してくれる皆さんに報いたいなと思っています。
山下: その通りですね。選手でなくなっても、技能五輪での経験を生かして、会社が困ったときこそ頼りにされる人間になっていたいですよね。
北本: 自動車業界は100年に一度の変革期ですし、会社もいろいろと新しいことを始めています。電子機器の専門家である僕たちだからこそ、役に立てることがあると思います。
山下: お互い頑張っていきましょう。まずは国際大会にむけて、ラストスパートですね!
2019年7月23日トヨタ自動車保見研修センター本館にて