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2025年度(第45回) 精密工学会技術賞を受賞

2025年9月19日

株式会社デンソー(以下、デンソー)は、「不確実な事業環境を勝ち抜くトリプルS*生産システム」を開発した当社の技術者が、公益社団法人精密工学会が主催する2025年度(第45回) 精密工学会技術賞を受賞したことをお知らせします。本賞は、精密工学の領域で創造的業績をあげた企業等の研究者・技術者に対して、その精進と努力に報い、かつ将来の発展を期待して贈られます。
このたび開発した「トリプルS生産システム」は、標準化された設備モジュールの組み替えにより、製品や生産量の変化に応じてライン形態を柔軟に変更することが可能な生産システムです。従来の専用ラインの効率性と、多品種少量生産への柔軟性を両立しながら、長く使い続けることが可能な生産システムを提唱したことが、技術力とサステナビリティの観点から評価され、今回の受賞に至りました。

なお、表彰式は9月18日に京都大学 百周年時計台記念館 百周年記念ホールにて行われました。

精密工学会技術賞 受賞者
新井 裕明 株式会社デンソー メカトロニクスシステム製造部
中川 晴貴 株式会社デンソー メカトロニクスシステム製造部
松石 穂   株式会社デンソー 生産技術部

業績名
「不確実な事業環境を勝ち抜くトリプル S 生産システム-製品・量の変化に応じライン形態を変えて設備を使い続けるフローショップ型生産方式-」

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    トリプル S 生産システムを導入した生産ラインと設備

本業績の概要
近年、自動車業界は電動化や自動運転の進展など大きな変革期を迎え、製品需要の予測が困難な状況が続いています。また、サーキュラーエコノミーの観点からも、設備を有効活用し、廃棄を抑える資源循環型の生産システムが求められています。こうした背景のもと、当社は「生産設備を最大効率で長期的に運用することが環境負荷低減につながる」という考えで、従来の専用ラインの効率性と、多品種少量生産への柔軟性を両立する新たな生産システムを開発しました。

多品種少量生産に柔軟に対応するためには、生産計画に応じて生産ラインの設備を頻繁に組み替える必要があります。そこで、製品を跨いで要素工程を共通化した上で、工程単位で機能を集約した設備モジュールを開発し、さらに設備モジュールのサイズと接続インターフェースの規格化によって、組み替えを容易にしています。これにより、設備の流用を最大化し、長期間再利用できる仕組みを構築することで、専用設備の数を従来比 20%まで削減できる見込みです。
また、組み替えにかかる所要時間 約15分という目標を実現するため、設備可搬化技術を導入しています。具体的には、人手を介さずロボットによる設備モジュールの移動や設備モジュール間の切断・接続を持ち上げ動作と同時にワンタッチで行えるようにする工夫などを施しています。そして、時間がかかる設置後のロボットティーチングも、3 段階の位置補正技術を導入することで、再ティーティングレスを実現しています。
さらに、本システムは「デジタルトリプレット」アプローチを組み込んでいます。「デジタルトリプレット」アプローチでは、仮想空間のシミュレーター上でロボットなどの動作条件を検証し、熟練技能者が実機に実装します。設備に取り付けたセンサーから取得した大規模データを分析しながら、シミュレーション条件を見直すなど、デジタル技術と人の知恵を融合させた改善サイクルを回す仕組みにより、生産準備期間の短縮や品質向上を実現しています。
今後は、本システムを導入した生産製品数を増やし、工場全体の環境負荷低減を進めていく予定です。
これからもデンソーは、持続可能で柔軟な生産システムの開発を通じて、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していきます。

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    (左から)生産技術部 松石 穂、メカトロニクスシステム製造部 新井 裕明、中川 晴貴

*トリプルS:Sustainable(持続可能)、Smart(デジタル化)、Sensible(高感度)の頭文字