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世界初 2系統機電一体EPS-MCU 開発に向けた入社3年目の挑戦

2019年10月4日

2019年4月に株式会社デンソーは世界初2系統機電一体EPS-MCU(※1)の開発で文部科学大臣表彰を受賞しました。受賞を受けたチームの一人である社員が語る開発エピソードをご紹介します。

株式会社デンソー シャシーコントロール機器技術部  藤田 敏博

<プロフィール>

2006年入社以来13年間、EPSの製品設計一筋。受賞を受けたメンバーの中で最も若い社員。

自動運転時代を見据えて「絶対の安心」を追い求め、開発がスタート

安心・安全なモビリティ社会を実現する自動運転。日本においても2020年を目途に高速道路での自動運転(レベル3※2)実現を目指しています。※3

 そのような中、2008年からデンソーで始まったのが、2系統機電一体EPS-MCU(以下、2系統EPS-MCU)の開発です。EPS-MCUとは、ハンドル操作をモーターの力でアシストするシステムですが、ドライバーがハンドルを握る必要がない自動運転では、従来以上に確実なアシストが必要になることは明白です。快適な車室空間を楽しんでいるときに、突然、EPS-MCUのアシストが無くなったら、カーブを曲がり切れないかもしれません。「今までにない技術を新たに開発し、絶対の安心に近づきたい。」そんな思いから2セットのモーター巻き線・駆動回路・センサーを積み込み、万が一、片方が故障しても、もう片方がアシストを継続する世界初の2系統EPS-MCUの開発をスタートさせました。

  • ※1 Electric Power Steering Motor Control Unit
  • ※2 システムが全ての運転操作を実施(限定条件下)。システムからの要請に対する運転者の応答が必要。
  • 出典:デンソー時報 2018年9月号
  • ※3 出典:高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議
  • 平成30年6月発表 官民ITS構想・ロードマップ2018

ビッグプロジェクトを乗り越えられたのは上司の存在があったから

私が入社3年目で、このプロジェクトへの参加を指名されたときは、正直驚きました。実現すれば世界初製品となるビッグプロジェクトでしたから。私より経験のある先輩もいましたし、どうして私なのかなと……。ただ、3年間コツコツと力を蓄えて頑張ってきたので、実力を試したいと挑戦しました。

 担当したのは、2系統EPS-MCUの中でも、モーターを動かすための駆動回路の開発。2系統EPS-MCUは、モーターとそれを制御するECUの2つを1つのモーターサイズに一体化し収めるという、究極の小型化が必要だったのですが、その中でもモーターの駆動回路はECUの大きさを左右する重要な部品でした。

 小型化に向けてさまざまな解決方法を模索する中で、回路を平面構造ではなく、立体的に集積させる「立体モジュール化」に挑戦することになりました。しかし、社内に知見がなく、手探りで開発を進める日々。当時はがむしゃらに突き進むことしか頭になく、仮説を立てて失敗して、検証して……何度も挑戦して、やっと形になっていきました。しかし、正解にたどり着いたと思っても、新たな課題が沸き上がり、そのたびに大幅に設計を変更。繰り返される設計変更に、ベテランメンバーですら立体モジュール化は実現不可能ではないかと考えていたようでした。

 そのような状況でも、3年目の私が開発を続けられたのは、上司の存在が大きかったと思います。私の上司はドーンと構えて、失敗を受け止めてくれる人でした。だから、周囲の諦めムードを跳ね飛ばして、自分が納得いくまで失敗し、考え抜くことができました。

 3回目の設計変更で私がようやくたどり着いた案に対して、製造面での課題が多いと反対意見が上がりましたが、上司は私を信じてくれた。本当に心強かったです。実現可能性を証明するために、通常は試作部門が行う試作を、設計職である私たちが自ら行いたいという私の意見に賛同し、すぐに予算をもぎ取り、設備の確保に動いてくれました。

 最終的には7年に及ぶ開発を経て、モジュール化を成功させることができ、世界初の製品として、お客さまや社内外から高い評価をいただきました。

職場の様子
藤田と上司の株根

挑戦しなければ、何も生まれない

私が、このプロジェクトを通じて学んだことです。大きな挑戦じゃなくてもいいんです。日々の業務の中で、少し自分にはチャレンジングだな、と思う選択肢を選ぶようにしています。大きな成功も、小さなチャレンジの積み重ねの結果だと思っています。

今後も、当社で活躍する社員を不定期にご紹介していきます。