基本的な考え方

知財の力を事業成長の力に

デンソーは、「攻めと守りの知財戦略により、知財経営を実現する」を知財VISIONに掲げています。独自技術を守り、競争優位を確保するとともに、特許、ソフトウェア、ノウハウなどの多様な知的財産を戦略的に活用することで、お客様への新たな価値提供と持続的な事業成長を目指します。

知的財産戦略

戦略起点のIP創出・保護・活用

以下では、知財戦略を具体化する重点領域として「電動化・知能化・基盤技術」を取り上げ、IPの創出・活用を中心とした取り組みを紹介します。

電動化

電動化領域では、BEV・PHEV・HEVなど多様化するニーズに対応するため、必要な要素技術・製品を組み合わせた開発を進めています。こうした開発戦略と連動して、事業戦略と一体となったIPの創出を推進し、単に特許を取得するだけでなく、事業競争力に直結する特許ポートフォリオの構築を進めてきました。
こうして構築してきたIPは、技術保護に加え、事業価値やお客様価値を高める資産として活用する段階に入っています。 インバーター、モータジェネレーター、電動パワーステアリングなどの中核製品では、蓄積した特許をビジネス展開や取引拡大に積極的に活用しています。これら製品における特許ポートフォリオは事業活用を着実に促進しており、そのKPIである「特許活用率(=事業活用に至った特許件数/保有特許件数)」も年々向上しています。2015年の特許活用率を1とした場合、2025年は2.1倍まで向上しており、IPを事業収益の創出と航続距離の延伸などお客様価値の提供へと着実に結び付けています。
一方、走行中無線給電システムなどの将来開発テーマでは、SAE(Society of Automotive Engineers)などの標準化団体の議論にも参画し、その動向を踏まえた特許の先行投資を推進しています。特に、インターフェースや普及促進に資する領域においては、標準化の方向性に沿った特許ポートフォリオを構築することで、製品の採用性や接続性の向上に貢献しています。また、コア技術を磨いてきた成果として特許を拡充するとともに、それらを製品競争力の強化へとつなげることで、お客様への提供価値の拡大に貢献しています。

  • 環境領域における電動車関連特許価値スコア

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  • 電動車関連特許活用率の変化

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  • 走行中無線給電システムの特許保有件数

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知能化

交通事故死亡者ゼロに向けた社会課題解決を目指す知能化領域(AD/ADAS)では、安全性と信頼性を競争力の源泉と位置付け、車両メーカや開発パートナーとの連携開発、および安全性を説明・検証できるシステムや開発プロセスの構築を進めています。さらに、車室内センシングによるヒューマンエラー対応やインフラ協調技術による視覚外支援により、より安全で信頼性の高い運転支援・自動運転システムの実現を目指しています。これにより、2030年度に事故シーンカバー率80%の実現を目指しています。
こうした技術開発と連動し、デンソーはこれまで強みとして培ってきた、安全性・信頼性を支える高度安全支援システム(ADAS)のアプリケーション技術や走行環境・車室内のセンシング技術に加え、事故シーンカバー率を向上する自動運転システム(AD)やヒト・インフラ協調に関するIPの創出・強化を進めてきました。その結果、下図に示すように、AD領域、ヒト・インフラ協調領域における特許ファミリー件数の割合は2015年から2025年にかけて8ポイント増加しています。
今後も、安全性・信頼性にこだわった特許ポートフォリオの強化により競争力を向上するとともに、車両メーカ・開発パートナーとの連携開発で得たノウハウや走行データを活用することにより、AIの進化と実安全を両立する高信頼AD/ADASを提供し、交通事故死亡者ゼロに向けた社会課題の解決に貢献していきます。

AD/ADAS領域の特許ポートフォリオ変化(特許ファミリ件数の割合)

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  • AD領域の特許価値スコア推移

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  • ヒト/インフラ協調領域の特許価値スコア推移

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基盤技術領域(パワー半導体・ソフトウェア)におけるIPの創出・活用と競争力強化

<パワー半導体>

デンソーは、SiCパワー半導体を車載の厳しい条件に適合させながら、内製化による生産革新とパートナー企業との連携によるサプライチェーン強化を事業戦略の中核に位置付けています。また、ウエハ製造からパワーデバイス、インバータに至る一連のIPを自社で保有することで、車載用途に最適化したIPポートフォリオを構築しています。

デンソーの競争力を支えるパワー半導体の特許力

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これまで、ウェハ、エピ層、素子に至る特許およびノウハウを層別し、パートナーへのライセンスにより市場拡大を図るオープン領域と、自社競争力の源泉とするクローズ領域に再編してきました。2026年度は、内製SiC技術である独自の3次元構造特許を次世代(Gen4)に向けて、増強させています。今後も、低損失化に寄与する特許技術をもとに小型・高性能な電駆動システムを実現し、電動化の拡大によるカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

独自の3次元構造(特許技術)/低損失化によるSiCパワー半導体の高性能化

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<ソフトウェア>

CASEの進展で、モビリティには継続的な機能進化が求められています。デンソーは、複雑化・大規模化するシステムにおいても安心・安全と高品質を両立するため、車両全体を統合制御するプラットフォーム開発に取り組んでいます。さらに、In-Car側の機能進化で必須となるOut-Carとのインターフェース領域のソフトウェア技術も開発しています。
車両全体を最適に統合制御するプラットフォーム領域では、お客様からのデンソーへの期待と知財活用の視点を踏まえ、安全・信頼性を担保する冗長化技術やセキュリティ技術等の特許出願を強化してきました。現在では、図に示す通り、競合に先行した特許ポートフォリオを構築しています。
インターフェース領域では、自動車業界での技術普及を企図し、通信等のIT由来技術を車載で安全かつ高信頼に活用するための技術開発を進めつつ、一般社団法人JASPARなどでのOTA標準化活動と連動してSEP*を含む知財権の獲得を推進しています。
今後も継続して、ソフトウェアに関するIPの創出・保護・活用を一体で推進し、お客様に安心して使い続けていただける価値の提供と、持続的な競争優位の確立を両立していきます。

* Standard Essential Patent: 標準必須特許

  • ソフトウェアにおける安全・信頼性担保に関連する特許価値スコア

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知財経営を支える全社基盤の強化

これらの領域別取り組みを全社で着実に実行し、成果につなげるため、デンソーはガバナンス、データ活用、生成AI、人財育成といった知財経営を支える全社基盤の強化を併せて推進しています。

知財情報を活用した戦略の実行力強化

知的財産は、事業成長や技術開発の成果を表す重要な「情報資産」です。特許情報と事業・開発関連データを組み合わせて可視化し、重点領域における特許ポートフォリオにて強みや課題を明らかにしています。これらの情報資産を、将来のポートフォリオ形成を見通す「先行指標」、現在のポートフォリオの状態を把握する「現在指標」、これまでの活動成果を確認する「遅行指標」に層別し、各技術領域の事業フェーズに応じた知財活動に活用しています。
また、経営層が参画する知財戦略会議において、知財課題を経営課題として捉え、将来の事業成長に向けた知財投資や推進体制、特許ポートフォリオの強化方針を議論しています。今後も、KPIに基づくマネジメントサイクルを通じて、施策の実行と指標の変化を確認することで、知財戦略の実効性を高めていきます。

  • 知財の指標化項目(一例)

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生成AIの積極活用

デンソーは、知財活動の高度化と変革に向けて、生成AIの積極的な活用を推進しています。技術開発の高度化や広範囲化、開発スピードの激化に伴い、発明創出から権利化、活用に至るまでの一連のプロセスにおいて、より高い専門性と迅速な対応が求められる中、生成AIをその実現を支える重要な基盤技術と位置付けています。また、生成AI活用は、単なる効率化ではなく事業成長につながる高付加価値化のツールとして捉え、人と生成AIとの協働活動も推進しています。具体的には、技術部門における発明着想の拡大や他視点化の支援、技術動向の把握、先行技術調査や特許原稿の作成支援など、幅広い業務に適用を進めています。これにより、従来は個人の経験や知見に依存していた知財活動を進化させ、業務の効率化・品質向上と高付加価値化の両立を図っています。今後も生成AIの活用領域を拡大し、知財活動の変革を加速することで、事業価値創出への貢献を強化していきます。

知財人材の育成と体制強化

デンソーは、知財戦略の実行力を一層高めるため、知財体制の強化と人財育成にも取り組んでいます。知財人財の底上げに向け、教育体系の見直しを行い、社内知財教育プログラムを大幅に刷新するとともに、オンラインで受講しやすい形式へと転換しました。これにより、時間や場所にとらわれない学習環境を整備し、全社的な知財リテラシー向上と知財戦略の企画・実行力の向上を促進しています。
また、知財実務の実効性を高めるため、グループ会社である株式会社アイピックスは「株式会社デンソーIPパートナーズ」へ社名を変更し、役割を拡大しました。特許出願・権利化などの実務機能に加え、知財戦略を現場で着実に実行する体制を強化しています。今後も人財と体制の両面から、知財活動の進化を支えていきます。

推進体制

グローバル知的財産体制の強化

海外での事業展開を支えるべく、北米、欧州、中国の開発・設計拠点内に知的財産組織を設け、現地発明に関わる知的財産権の取得・活用や、他社知的財産権の調査を強化しています。北米・欧州拠点では現地の特許弁護士を採用して特許係争の支援を、中国拠点では模倣品対策や商標侵害対応によるブランド保護強化を行っています。また、知財マネジメント上のグループ全体および各地域の課題解決とガバナンス強化を目的として「グローバル知財会議」を定期的に開催しています。

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他社知的財産権の尊重

デンソーは、他社の知的財産権に関わる問題は、企業価値に関わるものとして重要品質問題と同等に考えています。開発段階より他社の知的財産権を調査し、自社製品・サービスが第三者の正当な知的財産権を侵害することがないよう、明確なルールを定め、その遵守を徹底しています。

第三者による権利侵害行為の排除

保有する知財権に対する第三者による侵害行為に関しては、適切かつ正当な権利行使を行っています。この活動は、特許侵害だけでなく、たとえば模倣品対策においても積極的に行っています。商標コピー品等の模倣品は品質に問題があるものが多く、デンソー製と信じてご購入いただいたお客様が不利益を被る可能性があります。2005年からは模倣品対策として、行政機関・税関と協力した摘発活動を継続しており、北米・欧州・中国の海外拠点とも連携しています。

今後の取り組み

技術革新のスピードが加速し、事業環境の不確実性が高まる中、デンソーは知的財産を価値創造と競争力の源泉と位置付け、「攻めと守りの知財戦略」を進化させています。これにより、お客様に新たな価値を提供し続けるとともに、持続的な成長と企業価値向上を実現していきます。