
CQO(チーフ・クオリティ・オフィサー) MESSAGE
「品質のデンソー」を取り戻す
〜燃料ポンプのリコール問題について〜
2020年3月より各カーメーカの皆様から届け出されている当社製燃料ポンプに関する一連のリコールにつきまして、多くの皆様にご心配・ご迷惑をおかけしていますことを、心よりお詫び申し上げます。
自動車部品製造を生業とする中で、当社の製品は命を乗せて走るクルマの重要機能部品であり、その製品に不具合があればお客様に多大なるご迷惑をおかけしてしまうことを考え、市場での不具合はあってはならないものという認識のもと、品質を経営の根本に据えてこれまで活動してきました。創業以来「品質と安全のデンソー」を掲げ、その精神を絶えず伝承してきたにもかかわらず、当社史上最大規模の品質問題を起こし、多くの自動車ユーザーやカーメーカの皆様にご心配・ご迷惑をおかけしてしまったことに、忸怩たる思いです。
リコールの対象になっている燃料ポンプの不具合は、当該製品を構成する部品の一つであるインペラ*において、樹脂密度の低いものが燃料によって変形し、作動不良につながるおそれがあるというものです。
今回の不具合を品質管理の観点で振り返ると、当該事象はリコール対象となった燃料ポンプに固有の製造上の要因による品質問題でした。成形工程の僅かな変化に、これまで我々が経験したことがない、様々な条件が複雑に絡み合った結果もたらされました。発生当時のデンソーの技術知見ではこの事象の発生を予見できず、原因解明にも時間を要することとなってしまいました。
その後の対応により、不具合事象の解析と原因解明および技術的な対策を完了しています。現在はその交換用部品を1日でも早くすべての対象のお客様にお届けできるよう、全社を挙げて、また、関係するサプライヤーのご協力をいただきながら、生産供給に向けて全力を尽くしています。
* インペラ:燃料を送る役割をする羽根車状の部品
デンソーは、世の中に届ける製品に対して万全な品質を確保するために、開発プロセスにおける厳しいゲート管理、量産前の品質確認や総点検、そして量産時における抜けのない現場管理など、考えうるあらゆる注意を払い、厳しい日常管理の中で生産しています。
一方で私どもモノづくり企業は、技術を進化させることによって企業を存続させ、成長を図るとともに社会課題解決への持続的な貢献を果たしてきました。技術を進化させるには、新たな挑戦が欠かせません。常に挑戦を続けながらも、いかにお客様にご満足いただける良い品質の商品をお届けできるか、その改善に向けて日々努力を続けています。
改善にあたって、当社は改めて品質第一の原点に立ち返り、さらなる品質向上を図るべく、全社を挙げた活動「Reborn21」を立ち上げ、品質担保に不可欠な「意識」「知識」「風土」の向上に継続して取り組んでいます。
「意識」面では、お客様第一の意識の徹底を図ってきました。お客様と揺るぎない信頼を築くため、改めて社長をはじめとする経営層や部門長らが率先してお客様第一の行動を示していきます。
「知識」面では、足元・将来に向け必要な品質基盤技術の蓄積を着実に推進し、品質の盤石化を図ってきました。今後も、急拡大するソフトウェアや先進運転支援システム、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーなど品質を取り巻く環境変化を捉え、品質基盤技術の進化を加速させていきます。
また「風土」面では、上司と部下が率直に意見を交わし合い、真の課題を理解して共に解決に向かう全員参加の風土の醸成が大切であり、労働組合とも協力し、一層の努力を重ねていきます。
「意識」「知識」「風土」を支える体制面では、安全品質本部を独立させて会社直下に配置し品質ガバナンスの強化に努めています。さらなる強化策として2020年より品質基盤技術の担当執行幹部を据えて全社横断的に品質基盤技術確立活動を推進しているほか、2022年以降は副社長が品質最高責任者CQOとして全社視点での品質活動を推進しています。
「信用を尊び責任を重んず」、社是の最初に明記されているこの言葉を改めて噛みしめ、お客様へ安心・安全をお届けすること、また、「品質」はデンソーの企業活動を支える基盤であることを肝に銘じ、モノづくり企業としての矜持を持ち、変化の先取りと正しい仕事の実践によって世の中の期待に応えるべく全社一丸となって取り組む決意です。引き続きご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
代表取締役副社長 CQO
山崎 康彦