
コーポレートガバナンス
基本的な考え方
デンソーは、変化の速いグローバル市場での長期的な企業業績の維持向上を図るため、コーポレートガバナンスの確立を最重要課題として認識しています。
「コーポレートガバナンス基本方針」に基づき、監査役制度採用の下、会社の機関として株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人などの法律上の機能に加え、様々なガバナンスの仕組みを整備するとともに、株主・投資家の皆様と経営状況についての情報共有・対話を継続して行うことで、健全性、効率性、透明性の高い経営を実践していきます。
コーポレートガバナンス基本方針
コーポレートガバナンス向上への取り組み
デンソーは、持続的に企業価値を向上させていくために、全社戦略議論を強化するとともに、コーポレートガバナンスの進化を図っています。
2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードの各原則についてすべてを実施しており、中核人材の多様性確保、サステナビリティへの取り組みなどについてコーポレートガバナンス報告書にて開示を行っています。
また、政策保有株式の縮減を大きく推進するなど、健全性・効率性・透明性の高い経営を実践しています。
コーポレートガバナンス報告書
ガバナンス体制と主な機関
デンソーでは監査役制度を採用し、会社の機関として株主総会・取締役会・監査役会・会計監査人を設置しています。また、経営の監督を担当する取締役と、業務の執行を担当する社長・副社長・経営役員の役割を区分・明確化する役員制度により、取締役数をスリム化し、スピーディな意思決定とオペレーションを実現しています。
当制度では、状況に応じて社長・副社長・経営役員が取締役を兼務することで、取締役会全体としての知識・経験・能力のバランスを確保しています。また、経営環境の変化に対応した機動的な経営体制の構築、事業年度における経営責任の一層の明確化を目的に、取締役任期を1年としています。
現状のコーポレートガバナンス体制を選択している理由
デンソーは、現地現物を重視した経営判断を行うことに加え、その経営判断がステークホルダーの期待に沿い信頼を得られるものになっているかといった点や、ガバナンスの観点から問題がないかといった点をチェックできる体制を構築することが重要であると考えています。その実現のためには社外取締役を含む取締役会と、社外監査役を含む監査役会により、業務執行を監督・監査する現体制が最適であると考えています。業績・企業価値の向上に向け、より良い経営判断を行うことができるよう、社外取締役には会社経営に関する豊富な見識を持つ方が就任し、それぞれの見識をもとに意思決定・監督にあたっています。
また、適切な監査のために社内事情に通じた常勤監査役と、高い専門性・見識を有する社外監査役で構成され、監査役それぞれが単独でも監査権限を行使できる独任制が維持される監査役会設置会社が適していると考えています。
コーポレートガバナンス体制
取締役会
取締役会では、法律上定められた案件、及び会社として重要な意思決定が必要な案件について決議を行います。また、可能な限り業務執行側に権限を委譲することによって、執行のスピードアップを図ると同時に、経営方針や経営戦略の議論により多くの時間を充てるようにしています。
取締役会は原則、月1回開催しており、メンバーは社内取締役5名、社外取締役3名、常勤監査役2名、社外監査役2名の計12名で構成されています。デンソーでは、社外取締役及び社外監査役の独立性について、金融商品取引法が定める独立性基準を満たすことを前提とし、企業経営や法務・会計・財務などの専門領域における 豊富な経験や知識を有し、経営課題について積極的に提言・提案や意見表明を行うことができることを要件としています。独立役員としては5名(社外取締役3名、社外監査役2名)を選出しています。
決議には取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数をもって行います。決議にあたり、生産的で効率的な取締役会運営を実施するため、社外役員へのサポート体制を強化しています。取締役会の前には資料の事前配布及び議案の詳細な事前説明を行っており、当日欠席となる取締役からは議案への意見・了解を取得の上で取締役会を開催しています。
2023年度の開催実績
開催回数 | 13回 |
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出席率 | 取締役:97% 監査役:100% |
取締役会全体の実効性分析・評価
デンソーでは、取締役会の実効性評価のために取締役会全メンバーに対してアンケートを実施しています。アンケート結果とともに、メンバーが感じている課題や改善点について忌憚のない意見を引き出すことを目的に、社内役員に対しては個人別インタビュー、社外役員に対しては独立役員会議で議論しています。
取締役会にて洗い出された課題を報告し、改善活動を計画・実施していくことでPDCAサイクルを回し、取締役会の実効性向上につなげていきます。
監査役会
経営の監査機能としての監査役会
監査役は、取締役会をはじめとする重要な会議に出席するほか、監査役会を原則、月1回開催しています。監査役会は、監査役4名 (うち社外監査役2名)で構成し、法定に定める監査役の員数を欠くことになる場合に備え、補欠の社外監査役1名も選任しています。
監査役会では、法律上定められた案件の決議に加え、取締役や経営幹部、内部監査部門、会計監査人との間で、会社の持続的成長や中長期の企業価値向上に関する意見交換などを行い、取締役などの職務遂行とグループ全体の業務・財政状況を監査し、経営監視機能を果たしています。
なお、業務の適法性・妥当性・効率性については、内部監査部門が社内規程にしたがって内部監査を行い、その指摘に基づいて各部にて業務管理・運営制度を整備し、充実させています。
2023年度の監査役会開催実績
開催回数 | 15回 |
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出席率 | 100% |
業務執行の体制
経営戦略会議・経営審議会
デンソーでは、経営の監督を担う取締役会と業務執行を担う役員の機能を分離しています。業務執行における重要案件に関する審議機関として「経営戦略会議」「経営審議会」を設置しています。この2つの会議と取締役会を含めた3つの会議を役員会議と位置付けています。
経営戦略会議では、中長期的な視点で事業・機能・地域軸での戦略的な議論、経営審議会では、取締役会決議事項をはじめとする経営全般に関わる重要事項(全社の事業計画・投資案件・重要な取引形態や協業案件・その他経営に関わる重要事項)の審議を行います。また、事業運営上重要な情報を共有し、迅速な業務執行に結び付けています。
両会議には、社長、副社長、事業グループ長、機能センター長、本部長、常勤監査役が出席し、多角的な議論を行う体制を整えています。
両会議は、原則、週1回開催しており、2023年度の経営戦略会議は22回、経営審議会は41回開催しました。
取締役会メンバーの選任
取締役・監査役の要件および多様性に関する考え方
取締役会は、デンソーの長期ビジョンの実現と、安定した企業経営のための的確かつ迅速な意思決定を図ることができるよう、多様性(国籍・ジェンダーなど)・経験・能力・専門性のバランスを考慮した構成としています。
取締役候補者については、デンソーの各事業の経営や喫緊の課題に精通しており、中長期の企業価値向上を狙った経営戦略策定、的確かつ実効性の高い経営の監督に資する人材を選任しています。また、監査役候補者については、事業経営・財務・会計・法務に関する知見を有し、適切な経営の監督に資する人材を選任しています。
取締役・監査役の経験・専門性(スキルマトリックス)
取締役会に求められるスキル(経験・専門性)は、会社が掲げる中長期的な事業戦略・方針などから、目的達成に不可欠かどうかを考慮し、選定しています。具体的には、現在は「2030年長期方針の実現に必要な経験・専門性」と「安定した企業経営を支える基盤となる経験・専門性」という2つの観点で11の項目を設定し、スキルマトリックスとして取締役会全体の経験・専門性を開示しています。
今後も事業戦略などの変更や事業環境変化を踏まえて適宜見直しを図っていきます。
2030年長期方針の実現に必要な経験・専門性 |
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安定した企業経営を支える基盤となる経験・専門性 |
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取締役・監査役の経験・専門性(スキルマトリックス)
各人に会社として特に発揮を期待する項目(最大5つ)を下記の通り示しています。(各人の有するすべての経験・専門性を表すわけではありません)
選任の決定手続き
取締役候補者、監査役候補者の選任について、社長及び関係役員が中心となり、各方面より意見を聞き、業績、人格、知見等を総合的に勘案して、その責務にふさわしい人物を選定し、独立社外取締役が議長を務め、かつ独立社外取締役が過半数を占める「役員指名報酬会議」において、選任案を立案します。
選任案は、取締役会での内定の決議を踏まえ、株主総会で審議した上で決定します。なお、監査役の選任案は、監査役会の同意も取得します。
取締役・監査役の構成
2024年6月20日時点
年度 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
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取締役の人数(人) | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 |
うち 社外取締役(独立役員)(人) | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 (37.5%) |
うち 女性(人) | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 (12.5%) |
監査役の人数(人) | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
うち 社外監査役(独立役員)(人) | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 (50.0%) |
うち 女性(人) | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 (25.0%) |
取締役会の 社外役員(独立役員)比率(%) |
41.6 |
41.6 |
41.6 |
41.6 |
41.6 |
41.6 |
女性比率(%) | 16.7 | 16.7 | 16.7 | 16.7 | 16.7 | 16.7 |
役員【注】の人数 (人) | 28 | 27 | 25 | 23 | 20 | 20 |
役員【注】における女性比率(%) | 7.1 | 7.4 | 8.0 | 8.7 | 10.0 | 10.0 |
【注】役員:取締役、監査役、経営役員
役員指名報酬会議
役員の指名・報酬に関する重要な事項の決定にあたっては、客観的な視点に基づき公平性・透明性を高めるために、独立社外取締役が議長を務め、かつ独立取締役が過半数を占める「役員指名報酬会議」を設置しています。
役員指名報酬会議の構成
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議長 櫛田 誠希 独立社外取締役 メンバー 有馬 浩二 代表取締役会長 林 新之助 代表取締役社長 三屋 裕子 独立社外取締役 Joseph P. Schmelzeis, Jr. 独立社外取締役 -
経営トップのサクセッションプラン
デンソーは、経営トップのサクセッションプランを経営上の最重要課題の一つに位置付け、「役員指名報酬会議」が主体となり、客観性・透明性の高いプロセスで次期社長やCEOの検討を行っています。
「役員指名報酬会議」では、デンソーに求められる経営トップ要件を策定の上、過去の実績・経歴・マネジメントの適性検査・社内外関係者による人物評価などの多面的な情報に基づき、最適な後継者を見極めるべく、継続的に議論しています。また、CxO以下、国内外の主要な経営幹部ポストについても、後継候補者を明確化し、中長期視点で育成を図っています。
サクセッションプランのプロセス
役員報酬
デンソーでは、①「中長期的な企業価値向上」「株主視点に立った経営」を促すものであること、②会社・個人業績との連動性を持つことで業績向上への意欲を高めること、の基本方針のもと、役員報酬等を決定しています。
報酬構成
デンソーの取締役(非業務執行取締役及び社外取締役を除く)の報酬制度は、固定報酬としての基本報酬、業績連動報酬としての賞与、株式報酬から構成されており、非業務執行取締役及び社外取締役の報酬については、独立性の観点から基本報酬(固定額)に一本化しています。監査役についても、遵法監査を担うという監査役の役割に照らし、基本報酬(固定額)に一本化しています。
なお取締役および監査役の報酬水準については、毎年、外部調査機関による役員報酬調査データにて、デンソーと規模や業種・業態の類似する大手製造業の水準を参照し、比較企業群における中位程度になるように報酬水準を設定しています。
業績連動報酬の算定方法
会社業績との連動性の確保および業績向上や持続的成長への意欲向上を目指し、役位別の基準額に会社業績評価と一人ひとりの業績・成果や中長期の取り組みを評価した個人別査定を反映して、業績連動報酬額を算定しています。業績連動報酬額は会社業績と個人別査定の結果に応じて、基準額に対して0~200%程度の範囲内で変動します。
会社業績の評価指標
会社業績の評価指標は、デンソーの企業価値向上に向けた企業戦略に連動して、連結営業利益、ROIC、サステナビリティ評価としており、各指標の評価ウェイト、評価方法は以下の通りです。なお、評価の基準となる当該事業年度の目標は中長期目標に基づき毎年設定しています。
指標 | 評価ウェイト | 評価方法 |
---|---|---|
連結営業利益 | 60% | 当該事業年度の目標に対して、為替等の外部要因の影響を加味した達成度で評価 |
ROIC | 20% | 当該事業年度の目標に対する達成度で評価 |
サステナビリティ評価 | 20% |
デンソーのサステナビリティ経営における下記重点取組課題を対象に、当該事業年度の目標に対する総合的な達成状況で評価。 <重点取組課題>
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株式報酬の内容
株式報酬は、譲渡制限付株式による支給とし、原則として役員退任時に譲渡制限を解除します。譲渡制限期間中に、法令違反その他当 社取締役会が定める事由に該当する場合、割当株式をすべて当社が無償取得することとしています。
報酬決定方法
当社は、取締役の報酬などの客観性・公正性・透明性確保のため、独立社外取締役が議長かつ過半数を占める「役員指名報酬会議」を設置しています。
取締役会は、株主総会の決議によって定められた報酬の範囲内において、当事業年度の報酬総額を決議するとともに、個人別報酬額の決定を「役員指名報酬会議」に一任することの決議をしており、「役員指名報酬会議」は、役員報酬制度の検討および会社業績や取締役の職責、成果、取締役会で承認された決定方針との整合性などを踏まえた個人別報酬額を決定します。
また、監査役の報酬などに関しては、株主総会の決議によって定められた報酬の範囲内において、監査役の協議によって決定します。
内部統制の整備・強化
公正かつ効率的な業務運営をめざし、「内部統制に関する基本方針」を策定し、行動規範・経営制度・リスク管理・コンプライアンスなど経営の根幹をなす分野ごとに、統制の基本方針と規程類・制度などを規定し、毎年一定時期に運用状況を検証のうえ必要に応じて修正・変更を行っています。
今後の取り組み
取締役会の実効性を向上させるため、毎年、出席メンバーにインタビューし、結果の振り返りと改善策について検討しています。経営審議会や各種委員会等についても、出席メンバーはアンケートで1年間の振り返りを行い、結果を事務局にフィードバックすることで、改善を積み重ねています。
こうした改善を積み重ねることで、デンソーでは、今後も引き続き、コーポレートガバナンスの向上に注力していきます。