CSwO(チーフ・ソフトウェア・オフィサー)MESSAGE
モビリティ社会に真の価値を提供するソフトウェア戦略
CSwO
林田 篤
3つの競争力で、クルマの進化を加速させる
クルマが社会とつながるSDV時代では、ソフトウェア(以下、ソフト)がクルマの価値を飛躍的に向上させます。安全・快適・笑顔での移動を実現するためには、安全を担保した上で、アプリダウンロードを可能にするなど、IT技術を車載に適用する必要があります。車載ソフトのコード数は2030年には2020年比6倍以上の6億行規模になるといわれており、Android OSの2,000万行と比較しても桁違いの量です。
デンソーの競争力は、「実装力:最先端技術を使いこなし大規模プロジェクトをまとめ上げる力」「人財力:社内外の様々な専門家と共創する力」「展開力:業界標準をリードする力」です。デンソーは、車載ソフト開発に40年以上、SDV実現に必要な大規模開発には20年以上取り組んでおり、さらにその力を伸ばしていきます。
パートナー共創と、最先端技術の導入で競争力強化
クルマは人の命を運ぶモノである以上、高い信頼性が求められます。デンソーはクルマ一台分の幅広いソフト・ハードウェアを提供し、メカ・エレクトロニクス・ソフトの三位一体でクルマの開発に精通していることが強みです。これにIT技術を加えてより広い視点でユーザー価値を提供するために、関連業界との新たなパートナーシップや共創を進めています。その一環として、2024年6月に株式会社NTTデータと包括提携を結びました。今後も多様なパートナーと連携し、お客様への提案力を強化していきます。
さらに、長年の車載ソフト開発の知見を、製品開発に携わる誰もが効率的に活用できるよう、評価検証だけでなく設計プロセスでもAIやツールによる自動化を加速します。
最先端技術を使いこなす大規模開発には、ソフト人財の質・量確保が重要です。デンソーは、2030年度に2023年度比1.5倍の18,000人の開発体制を構築すべく、採用力向上に向けたブランディング活動強化、他職種からのリスキリング、グローバルでパートナー会社との関係強化を推進します。
また、Career Innovation Program(CIP)で全世界共通のスキルと基準を定義し、世界中のエンジニアのスキルを見える化しています。その中で高いスキル基準を持つ人財を社内認定基準で認定して、多様な分野での活躍を促進しています。
人と技術の両面で業界ソフトの標準化をリード
ソフト人財が枯渇する中、各社が個別に開発していては、クルマ業界がグローバルで勝ち残れません。デンソーは、お客様との信頼関係を活かしてソフトの標準化をリードし、業界協調型のエコシステム構築に取り組んでいます。
人財面では、CIPを業界標準化すべく関係省庁と取り組みを開始しました。技術面では、自動車ソフトの標準化団体である一般社団法人JASPARの幹事会社5社で唯一のサプライヤーとして参画し、機能安全やセキュリティなどのSDV技術テーマで標準化を推進しています。経済産業省と国土交通省が進めるモビリティDX戦略の業界ソフト標準化にも積極的に貢献していきます。
CSwOとしての決意
デンソーが培ってきたソフトの競争力がますます発揮できるSDV時代が目の前に迫っています。2035年度には2023年度比約4倍となる8,000億円規模のソフト事業創出を目指します。従来のハードウェア組み込み型だけでなく、ソフト単体ビジネスの受注もすでに獲得しています。事業加速に向けてグループ全体のソフト開発力・価値提供力をさらに高め、「デンソーのソフトがないとモビリティ社会はつくれない」、そのような世界を目指します。
ソフト開発の大規模化に伴い、一つのプロジェクトに関わるエンジニアは1,000人を超えます。いわば、家づくりから巨大ビルづくりに変わるようなものです。設計者同士が切磋琢磨し、多くの開発工程を通して高品質な価値をつくり込む。これらヒトづくりとモノづくりは、まさにデンソーが培ってきたDNAそのものです。モノづくり企業のデンソーがソフトを強化することで、会社全体が強くなります。私は、ソフトエンジニアの誇りと元気にこだわり、デンソーのソフト事業を通じた社会価値創出を実現していきます。