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CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)MESSAGE

変化の激しい時代に、変わらず価値提供を続ける
研究開発マネジメントと技術基盤の強化

  • yoshifumi-kato

経営役員 CTO
加藤 良文

 

柔軟性・機動性の高い研究開発マネジメントに向けて

自動車産業を取り巻く環境は刻々と変化しています。BEV化一辺倒で進行するかのように見えていた電動化の流れは揺れ動き、地域によってはHEV・PHEVが再評価されるなど、社会・市場のニーズは多様化・複雑化しています。技術トレンドは変化のスピードがさらに速く、数カ月単位で新技術が大きく進化・普及していきます。

デンソーの中長期技術戦略では、「電動化」「自動化」「カーボンニュートラル」、そしてこれらを支える基盤技術「半導体」「ソフトウェア」を注力領域に据えています。変化の激しい時代だからこそ、「ボトムアップで自由闊達な、時代を先取りした前のめりの研究・開発」と、「トップマネジメントによる方向性の舵取り、変化に合わせた迅速な戦略修正」の両輪で技術経営を敢行します。

長期安定での研究開発投資

将来にわたり企業成長を続け、持続的な価値提供を実現するためには、環境の変化が激しい中でも長期的・持続的に経営資源を確保し、じっくり腰を据えて研究開発を進めていく必要があります。デンソーは、事業環境が苦しい最中でも、売上の8~9%に相当する経営資源を研究開発費として確保・投入してきましたが、今後もこの投入水準を下げることなく研究開発投資を進めていきます。

知的資本の内外製戦略

クルマが社会と連携するようになると、大規模統合ECU用の高性能ロジック半導体であるSoCと単一ECUに使われるマイコン(MCU)、ECU全般に使われるASIC、モータを駆動するためのパワー半導体と、実に多くの半導体がクルマに搭載されます。車載半導体の市場規模は、2030年には2020年比で3.5倍に拡大するといわれています。デンソーでは半導体を注力する基盤技術の一つに掲げ、以下3つの戦略で知的資本の強化に取り組んでいます。

1. ロジック半導体:外部知的資本の活用・連携

高度なロジック半導体の安定調達を目指し、半導体メーカ・ファウンドリとの分業により運転支援SoCを共同開発するなど、車載半導体の戦略的な仕様提示を実践しています。また、28mmマイコンの国内生産に向け、TSMC社およびソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社と共に実施したJASM社への出資で、安定調達の構えを加速します。

将来のクルマの知能化を見据え、ロジック半導体の先端研究にも取り組みます。2022年には、ロジック半導体の性能を決定付ける微細化プロセスの開発・製造に取り組むRapidus株式会社を共同設立しました。2023年には、産官学を挙げて車載高性能半導体の技術研究を行う「自動車用先端SoC技術研究組合(ASRA)」にも参画し、自動車専用SoCの開発に取り組みます。

2. センサ信号を制御するアナログ半導体:内部知的資本の強化

アナログ半導体は、デンソーが得意とするクルマ特有の制御仕様を埋め込むものであり、内製と外部調達の最適化で、競争力と安定供給の両立を図ります。

3. パワー半導体:内部知的資本の強化

パワー半導体は、デンソーの差別化領域です。半世紀以上にわたる車載半導体の研究・生産実績を活かし、内製研究を基本として、システム競争力の最大化を目指します。HEV向けには、小型で低損失なデバイス構造と、大口径300mmウエハでコスト競争力を高めたSi製を供給します。

BEV向けには、電力損失を大幅低減できるSiC製を供給していきます。SiCの量産に向けては、高品質で安価なSiCウエハの生成を実現する、デンソー独自の“ガス法”という生成技術で、結晶成長速度を高速化し、生産コスト30%削減を目指します。

 

デンソーは、世界最高水準の開発力・技術力・製造力を結集し、幅広い領域に実装可能な技術開発を通じて人々の生活を豊かで充実したものにしていきます。