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CQO-MESSAGE

CQO(チーフ・クオリティ・オフィサー) MESSAGE

変わりゆく時代に、変わらぬ安心品質をお届けする

「品質のデンソー」を取り戻す
~燃料ポンプ品質問題を経て~

デンソーは創業以来「品質と安全のデンソー」を標榜し、品質と安全を大切にする経営の精神を実践し伝承してきました。しかしながら、2020年より各カーメーカから届出された燃料ポンプのリコールは、当社にとって過去最大規模の品質問題となり、ステークホルダーの皆様には大変なご心配、ご迷惑をおかけいたしました。その一方で、多くの皆様からの多大なるご支援、ご協力のおかげをもちまして、交換用部品の納入を完了することができましたこと、関係する皆様に心より感謝申し上げます。

2024年度は、これら燃料ポンプのリコールに関連した品質費用の追加引き当てこそありませんでしたが、ほかに複数の品質問題が発生いたしました。お客様、ユーザーの皆様をはじめ多くの皆様に依然として多大なるご心配、ご迷惑をおかけしていること、また自社に大きな財務的影響を与えるものであることを重く受け止め、引き続き品質の向上、「品質のデンソー」の復権を経営における最重要課題の一つとして取り組んでいます。

環境変化により生じる、新たな品質課題と対策

現在、電動化や自動運転へのニーズの高まり、SDV(Software Defined Vehicle)の普及により、品質の面でも大きな環境変化が起こっています。自動車の機能の中でソフトウェアに依存する領域が拡大し、領域をまたぐ品質の担保が必要になってきました。また、グローバル競争が加速し、従来の半分以下の超短期開発が求められる中、デンソーの競争力である品質も圧倒的な速さでつくり込むことが必要です。変わりゆく品質課題に挑戦すべく、デンソーでは次のような取り組みを強化しています。

ソフトウェア品質の向上:
品質の高いソフトウェアをつくり込むために、ソフトウェア開発における要素技術を細かく定義し、それぞれの領域の専門家を認定しています。開発の初期段階では必要となる要素技術を明確にした上で、要素ごとに任命された専門家がその後の設計成果物をレビューすることによりソフトウェア品質を高める取り組みを進めています。保有スキルの客観的な認定を行うSOMRIE®︎制度を導入し、各技術領域における第一人者の専門家を2023年から2030年で3倍に増やす目標を掲げるなど、ソフトウェアの専門家の育成を加速しています。同時に、ソフトウェア開発にAIを積極的に活用し、2030年には品質開発プロセスの40%をAI化することでヒューマンエラー撲滅を目指します。

車載用電子部品の品質向上:
当社製品には数百から数千の電子部品が搭載され、その一つひとつに高い品質水準が求められます。サプライヤーやデンソーそれぞれにおいて不具合の検出力を高めるだけでなく、サプライヤーの機密情報やノウハウの保護を適切に担保した上で工法や検査の情報提供をお願いし、サプライヤーから当社に至るサプライチェーン全体で効率的かつ効果的な検査を最適化し、不具合検出の総合力を高めています。

AIを活用した業務の質向上と効率化:
業務上の複雑なモノと情報の流れを整理、標準化した上で、これまでに積み上げてきた膨大な量のノウハウや失敗からの教訓点などの資産を集約します。これらのデンソーが積み上げてきた知見を、AI技術により品質確保に必要な情報を適時・的確に示すことで、開発から生産に至る全プロセスで業務の質とスピードをさらに高めます。2027年度を目途に全社プロセスに導入すべく開発を進めています。

健全な企業風土が生み出す、確かなコンプライアンス意識

2024年の自動車業界全体を振り返ると、複数の企業で認証不正問題が相次いで発覚しました。デンソーでは、認証関連法規に関する社員教育を通じた啓蒙・啓発を毎年実施していますが、他社で発生した認証不正問題をきっかけに全社点検も実施し、法規順守のさらなる徹底を図っています。また、不正を発生させないための取り組みとして、製品の量産出荷までに設けた9つのゲートにおいて、開発設計部門や実験部門から独立した法規認証の専門部門がチェックし、さらに認証部門からも独立した品質保証部門がダブルチェックするなどの仕組みを実装しています。

不正を生まないためには、仕組みだけでなく、高いコンプライアンス意識とともに、風通しの良い職場風土が必要です。上司・部下が率直に意見を交わし合い、真の課題を理解して共に解決に向かう文化を絶やさぬよう、引き続き弛まぬ努力を重ねていきます。

「誰もが安心して使える」品質で、社会の期待に応える

社是に刻まれた「信用を尊び責任を重んず」の言葉は、ビジネス環境が大きく変わりゆく現在においても変わらない、デンソーにおける品質への取り組みの指針です。変化の先取りと、正しい仕事の実践により、「誰もが安心して使える品質水準」という社会からの期待に応えていくことをお約束します。引き続きご支援のほどよろしくお願いします。

 

代表取締役副社長 CQO
山崎 康彦