多様な人材の活躍推進
基本的な考え方 – 共感される企業であり続けるために–
デンソーがこれからも社会に信頼され、共感される企業であり続けると同時に、発展し続けていくためには、世界中のさまざまな社員の力や視点を活用していくこと、つまりダイバーシティ&インクルージョンのさらなる推進が重要です。
多様な価値観をもった社員から生まれる「新たな発想」を大切にし、社員一人ひとりの個性を尊重し思いやる「温かな心」を育むことは、デンソーの持続的成長にとって欠かすことができません。そこで、デンソーでは、年齢、国籍、人種、性別・性自認・性的指向・性表現、障がいの有無、宗教、経験、価値観など目に見えない違いも含め、多様な人材が生き生きと活躍できる環境・組織風土の実現に向けて取り組みを進めています。
1. グローバルでの取り組み
2016年 デンソーはダイバーシティ&インクルージョンに取り組む姿勢を社内外に示すべく、経営トップの思いをメッセージとして発表し、当社ウェブサイトや社内イントラネット、社内報などで公開しました。トップのダイバーシティ&インクルージョン推進に対する強い思いの下、世界各地域において積極的に取り組みを進めています。
ダイバーシティ&インクルージョン担当役員のメッセージ
デンソーは地球にやさしく、すべての人が安心と幸せを感じられるモビリティ社会の実現に向け、新たな価値を創造する企業です。
私たちが目指す、カーボンニュートラル・交通事故ゼロの社会の実現のためには、イノベーションが必要です。イノベーションの源泉は異なる意見・アイデアを自由闊達に交わせる共創環境だと考えます。
こうした環境を生み出すには、多様な才能・価値観を持つ世界中の社員(ダイバーシティ)が、心のこもったコミュニケーションを通じて相手を理解し、尊重し合うこと(インクルージョン)が何よりも重要です。
絶え間なく変化する社会の期待に応え、共感される企業であり続けるために、デンソーは、ダイバーシティ&インクルージョンをグローバルで推進していきます。
副社長
最高人事責任者(CHRO)
山崎 康彦
取り組み事例
ダイバーシティ&インクルージョンの課題は国や文化によって異なるため、地域事情に合った活動を進めています。
例えば、生産現場で働く女性が多いベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピンやタイでは座った状態で作業ができる妊婦ラインを設置。妊娠中も母体に負荷をかけることなくいきいきと働ける環境の整備、授乳中のワ―キングマザーのサポートも実施しています。
また、北米や日本においては6月の「プライド月間【注】」に社内イベントを開催し、性的マイノリティの方へのアンコンシャス・バイアスを撲滅する取り組みをしています。
2022年度は、国際女性デーがある3月に北米・欧州・インドで同時に女性活躍促進イベントを開催しました。各地域でパネルディスカッションや有識者講演会を行い、それぞれ数百人の社員が参加しました。
2. 日本国内での取り組み
(1) 多様性の促進に向けて
(株)デンソーでは、「女性・高年者・障がい者・外国人の活躍促進」を重要課題として、2014年1月よりダイバーシティ推進の専任組織を強化し、CHROのリードのもと、制度の拡充や社内の意識改革の推進などに取り組んできました。
年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|
女性 | 5,674人 (13.9%) |
6,529人 (14.2%) |
6,631人 (14.6%) |
6,710人 (15.1%) |
6,709人 (15.5%) |
|
高年者 (定年後再雇用者) |
3,396人 | 3,406人 | 3,679人 | 4,053人 | 4,521人 | |
障がい者【注1】 | 743人 (2.22%) |
774人 (2.25%) |
825人 (2.28%) |
842人 (2.37%) |
812人 (2.34%) |
|
外国人【注2】 | 286人 | 369人 | 278人 | 231人 | 283人 |
(2) 女性の活躍推進
(株)デンソーでは、女性の採用を強化するとともに、ライフイベントを経てもキャリアを継続できるような環境の整備とキャリア形成支援を実施、継続的に女性の活躍推進を図っています。
【女性活躍推進のロードマップ】
女性活躍推進の目標
「女性採用の強化」「女性社員のキャリア形成支援」「男性の育児参画支援」を柱に、2025年度末に向けた目標を設定し、活動を推進しています。
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新卒採用女性比率:事務 50%、技術 15%、技能30%以上(2021年度以降)
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事技系女性管理職数:200人、技能系女性管理職数:200人 (2025年度末まで)
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男性育休取得率:13%、期間:1カ月以上、 女性育休取得率:99%、期間:1年 (2025年度末まで)
主な取り組み
キャリア形成面談の実施 | 年1回、上司とキャリアについての面談を実施し、その内容をふまえて上司が中長期的な育成計画を作成。計画に沿って日々の業務遂行・育成を行うことで、二人三脚でキャリアデザインの実現を目指しています。 |
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女性リーダー研修 | 新任女性管理職に対し、組織管理概論や手法の座学に加え、上司の支援のもと、職場課題解決を通してリーダーとしての発想や組織管理手法を実践・体得する研修を実施しています。 |
メンター制度 | 女性管理職が、管理職候補の女性社員へアドバイスし、マネジメントへの不安の払しょくや、視野の拡大につながるよう支援をしています。 |
技能系女性活躍推進 ワーキング活動 |
技能系女性社員で、性差なく誰もがいきいきと活躍できる職場実現に向けた課題・対策の議論をしています。キャリア形成のためのロールモデル紹介など女性同士のネットワーク拡大も行っています。 |
管理職向けダイバーシティ研修 | 管理職が女性活躍をはじめとするダイバーシティ&インクルージョンの意義を理解し、職場風土を変える推進者となるよう、多様な社員の活躍推進の必要性や、部下との接し方、キャリア形成、評価などについて研修しています。 |
新入社員向けダイバーシティ研修 | 女性に限らず、多様な人材の活躍が企業にとって不可欠であることや、アンコンシャス・バイアスがあることを意識するための研修を行っています。 |
女性活躍促進セミナー | 女性のキャリアに関する意識向上を目的に、講演会を実施しています。女性や女性部下を持つ管理職の方が参加しています。 |
女性のための健康セミナー | 女性特有の健康課題があることを理解し、健康でいきいきと働くためのセミナーを実施しています。 |
男性育休取得促進セミナー | 男女ともに育児に参画する風土を醸成するため、管理職向けに男性育休取得促進セミナーを実施しています。 |
育休前後面談 | 時間の制約を受けやすい育児期にもキャリアの継続を諦めることなく、成長につながるような仕事にチャレンジすることが、本人の成長意欲につながります。上司と部下が一体となって、働き方を議論、キャリア形成をすることが必要と考え、育児休職の前と後で面談を実施しています。 |
両立支援セミナー | 復職後の働き方を夫婦で検討するために、パートナーと参加するセミナーをオンラインで開催。育児休職者の円滑な復職を支援するとともに、仕事も育児も力を合わせて乗り越えられるよう、パートナーの意識改革も促しています。 |
両立支援ハンドブック | 本人またはパートナーの妊娠発覚から出産、復職の各フェーズにおいて取り組むことを記載したハンドブック(男性用、女性用、上司用)を作成し、両立を支援しています。 |
女性相談窓口 | 女性社員がキャリアプランや出産・復職などの悩みを気軽に相談できる専用窓口を設け、同じ経験を持つロールモデルを紹介するなどの支援を行っています。 |
配偶者の転勤等に伴う再雇用制度 | 配偶者の転勤や介護に伴う退職者の再雇用を実施しています。 |
職種転換制度 | 実務職として入社した社員が、総合職としてキャリアを新たに築けるよう、職種転換の制度を設けています。 |
各種勤務制度 | テレワーク、フレックス、時短勤務、時間外労働の免除、夜勤の免除、半日単位の有休、積み立て有休、副業、再雇用制度(介護・配偶者転勤)、遠隔地勤務(育児・介護事由)など、勤務における多様な選択肢を設けています。 |
年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
---|---|---|---|---|---|
役員【注1】 | 1人 1.8% |
2人 7.1% |
2人 7.4% |
2人 8.0% |
2人 10% |
女性管理職 | 86人 1.1% |
103人 1.3% |
113人 1.5% |
127人 1.7% |
139人 1.8% |
年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
---|---|---|---|---|---|
事務系総合職 | 24人 41% |
29人 52% |
25人 48% |
5人 29% |
26人 48% |
技術系総合職 | 58人 14% |
54人 14% |
46人 14% |
31人 12% |
24人 10% |
技能職【注2】 | 123人 32% |
101人 29% |
79人 30% |
70人 28% |
67人 28% |
実務職 | 29人 94% |
19人 100% |
27人 100% |
3人 100% |
7人 100% |
採用全体 | 26% | 25% | 24% | 18% | 23% |
(3) 高年者の活躍支援
(株)デンソーでは、高年者の豊かな経験と能力の発揮及び本人の働きがいの支援に向けて、社員のライフプランに合わせた多様な働き方・生き方を支援するとともに、定年後も活躍する制度や高年者のチャレンジ意欲を高める施策を導入しています。
現在、定年退職者の84%が再雇用制度を利用、在職中の経験を活かして活躍しています。
(4) 障がい者雇用への取り組み
デンソーの障がい者雇用について
(株)デンソーでは、1978年より障がいのある方の社会参加・自立を目的として、身体障がい者の雇用を開始しました。1984年には、愛知県で初となる肢体不自由者を主体とした特例子会社の「デンソー太陽」を設立。その後、2016年には、知的・精神障がいのある方の活躍の場として、オフィスサポート業務を中心とした新たな特例子会社「デンソーブラッサム」を設立しました。
現在デンソー及び特例子会社では、800人を超える障がいのある社員が働いています。
障がい者雇用の方針
デンソーでは、障がいのある方に、安心して長く働き続けてもらうことを目指し、以下の2点を雇用方針に掲げて取り組みを推進しています。
障がい者の社会参加・自立のため、積極的に雇用する
障がい者がその能力を発揮し、いきいきと働ける企業となる
障がい者雇用率の推移
主な取り組み
(株)デンソーでは、障がいのある社員も、健常者と同じ職場で、同じ業務に携わっています。障がいをハンディキャップと感じることなく、安全に、生産性高く活躍するため、障がいの特性に応じた様々な支援や配慮をしています。
構内のバリアフリー化 安全対策 |
エレベーターやオストメイトトイレ、スライドドアを設置するなど設備を充実させています。 生産のラインにおいては、聴覚に障がいがある方が光や振動で設備の稼働状況などが把握できるようにしています。 |
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手話サークル開催 文字化ツール配布 手話通訳派遣 |
聴覚に障がいがある方とのコミュニケーションを支援する施策として、手話ができる社員の育成や交流機会の創出(手話サークル)を進める他、音声を自動認識し文字化するツールの配布や、面談・研修時には手話通訳を派遣しています。 |
アビリンピックへの挑戦 |
アビリンピック(全国障がい者技能競技大会)への参加を積極的に支援しています。 2004年度より、電子機器組立部門へ毎年出場しており、常に上位の成績を残しています。 |
(5) LGBTQ+への取り組み
(株)デンソーでは、性別・性自認・性的指向・性表現などによる差別のない職場環境を提供できるよう、社員の意識改革や理解活動を行うとともに、性差のない仕組みへと改善を行っています。
【取り組み事例】
従業員番号・職服の男女共通化
パートナーシップ制度
新入社員へのダイバーシティ研修
全ライン長 約3,100人へのハラスメント研修
PRIDE月間の理解促進イベント
LGBTQ+理解促進ハンドブック
LGBTQ+理解促進セミナー
アライ(ALLY)登録
社内相談窓口設置、相談事項解決に向けた個別対応(トイレ・更衣室・健康診断対応など)
(6) キャリア採用社員への取り組み
(株)デンソーでは、これまでのデンソーにはない多様な経験や知識を増やすために、キャリア採用を実施しています。新規キャリア採用者数は総合職採用者数の約25%に相当し、入社後は、導入研修などを通じて人的ネットワークの構築をサポートするほか、相談窓口を設け、心身面での不安解消にも取り組んでいます。
今後も同水準を目安とし取り組んでいきます。
(7) 多様な国籍/人種/宗教の方への取り組み
㈱デンソーでは、様々なバックグラウンドがある社員が安心して働けるよう取り組みを進めています。多言語で表示可能なイントラネットがある他、多様な文化を理解するためのグローバルウィークでは、社員食堂で様々な国のメニューを提供しました。また、多様な宗教・信仰が社員個人の価値観を構成する要素であることを理解し、日常生活において宗教・信仰上の様々な義務のある社員も安心して働けるよう、祈祷所を設けています。
3. ワークライフバランスに向けた取り組み
(株)デンソーでは、多様なライフスタイルの社員にとって働きやすい会社となるため、仕事と私生活の両立を充実させるための柔軟な制度を整備するとともに、職場全体での意識・働き方改革を促す取り組みを実施しています。
主な取り組み
育児・介護にともなう休職制度・働き方の充実 | 育児・介護とも安心して仕事を続けられるように、法定以上の休職制度・勤務体系を整備しています。 |
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事業所内託児施設の運営 |
生後8週~小学校入学前までの児童を対象とした託児施設。 会社カレンダーに合わせた祝日の運営だけでなく、早朝や一部夜間の預け入れができ、個人の状況に応じた多様な働き方に対応しています。
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技能系職場向け祝日保育 | 会社稼働日である祝日に、製作所内に託児スペースを設置し、子を持つ社員も祝日に出勤可能な体制を整えています。 |
遠隔地勤務制度 | 育児・介護と仕事の両立に挑戦する社員を支援するために、働く場所にとらわれない働き方(遠隔地勤務)ができます |
テレワーク制度 |
終日もしくは出社前・帰宅後の在宅や社外で勤務できます。 フレックスタイムとの併用により、働く場所・時間の柔軟性確保に努めています。 |
子が生まれる社員と上司のコミュニケーション促進施策 | 子が生まれる予定の社員とその上司が、育児休職の取得や両立期の働き方などについて話し合う場を設けています。 |
育児との両立支援制度
介護との両立支援制度
年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
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育児休職 | 女性 | 286人 | 349人 | 316人 | 330人 | 335人 |
男性 | 45人 | 57人 | 123人 | 269人 | 506人 | |
介護休職 | 女性 | 8人 | 9人 | 2人 | 5人 | 5人 |
男性 | 7人 | 16人 | 8人 | 9人 | 13人 | |
育児のための 短時間勤務 |
女性 | 307人 | 344人 | 361人 | 354人 | 393人 |
男性 | 2人 | 6人 | 9人 | 10人 | 17人 |
4. 社外からの評価
2016年 | 経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」 |
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2017年 | 愛知県「あいち輝きカンパニー」表彰 |
2018年 | 厚生労働省「均等・両立支援企業表彰」ファミリー・フレンドリー企業部門 厚生労働大臣優良賞受賞 |
2019年 | 「第8回 日本HRチャレンジ大賞 奨励賞」受賞 |
2021年 | 愛知県「ファミリーフレンドリー企業」継続認定 |
2022・2023年 | 「PRIDE指標」2022・2023 Gold受賞(2年連続) |
今後の取り組み
多様性への取り組みは、社会全体そしてデンソーグループの持続的成長に不可欠な取り組みです。
今後もダイバーシティ&インクルージョンをデンソーグループ全体の経営課題とし、グループ一丸となって取り組みを充実・強化していきます。