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サプライチェーンでのサステナビリティ推進

基本的な考え方

グローバル企業には、その社会的影響力の大きさから、自社はもちろんサプライヤーに対しても、法令順守、人権・労働、環境、企業倫理などに配慮した企業行動を促す施策が期待されています。このようにサプライチェーン全体において社会的責任の実践をはじめとした「サステナビリティ」を推進することこそ、社会から信頼・共感される企業をめざすデンソーグループの使命と考えています。
デンソーではすべてのサプライヤーに、「デンソーグループサステナビリティ方針」の趣旨へ同意いただくとともに、「コンプライアンス・人権擁護・環境保全・職場安全など社会的責任の順守」を盛り込んだ「取引基本契約書」の締結、および サステナビリティに関するサプライヤーでの窓口担当者の配置や方針の明確化など、サステナビリティの推進を依頼しています。

具体的な取り組み

「サプライヤーサステナビリティガイドライン」に基づくサステナビリティの推進

デンソーでは、国内外の業界団体やお客様の要請を踏まえ、サプライヤーとともに効率的にサステナビリティを推進するため「サプライヤーサステナビリティガイドライン」を策定し、すべてのサプライヤーと共有しています。また、当ガイドラインに基づき、定期的に「デンソーグループサステナ自主点検チェックシート」によるセルフチェックをお願いし、「サプライヤーサステナビリティガイドライン」の趣旨に沿った活動の推進への合意を得ています。 また、必要な項目については改善をお願いしております。
なおサプライヤーには、自社のサプライヤー(デンソーグループの二次以降のサプライヤー)にも同様の取り組みを展開いただくようにお願いし、サプライチェーンでの取り組みを実施しています。

〈サステナ自主点検 結果〉
▪2024年度実績:グローバル主要サプライヤー約2,300社(購入金額の90%)で実施
結果 割合 懸念内容 / 活動
懸念なし 82%  
懸念あり 8% 〈主な懸念内容〉
  • 人権・労働、環境、企業倫理などに配慮した方針の未策定

  • デンソーTier2以降サプライヤーへの浸透不足

  • 自社のサプライヤーに対してデンソーのサステナビリティガイドラインを満たす要求や改善が不足している

〈活動〉
  • 懸念内容について各サプライヤーへ改善計画の策定および改善の実施を依頼

「サプライヤーサステナビリティガイドライン」の主な内容と展開

  • 展開

     1.周知

     サプライヤーサステナビリティガイドラインを配布 

     2.強み・弱みを見える化

     サステナ自主点検による自己診断

     3.点検

     デンソーによる点検結果の分析・フィードバック

     4.改善

     必要な取引先にて計画を策定し、改善実施

  • ガイドライン内容

    (1)安全・品質
    (2)人権・労働
    (3)環境
    (4)コンプライアンス
    (5)情報開示
    (6)リスクマネジメント
    (7)責任ある資源・原材料調達
    (8)社会貢献
    (9)皆様のサプライヤーへの展開

新規サプライヤーのアセスメント

新規に取引を開始するサプライヤーについては、取引先選定要領を社内規定として定め、運用をしています。
財務状況などの審査に加え、ISO9001やIATF16949などの品質マネジメントに関わる認証の取得状況の確認、デンソーグループサプライヤーサステナビリティガイドラインで言及する活動を批准しているか否かの確認を行い、取引開始の可否を判断しています。

サプライヤー研修への研修

企業を取り巻く環境は急速に変化しており、サプライチェーン全体で動向を理解し、適切な対応を取っていくことが重要と考え、デンソーの主要サプライヤーに対する研修を行っています。
2024年11月には、国内サプライヤー約350社にサステナビリティ説明会を開催し、人権・労働、環境、企業倫理などのトピックスについて、最新動向とその重要性を説明しました。
また、カーボンニュートラルや情報セキュリティの強化などについても適宜説明会を開催し、サプライチェーン全体での取り組みの重要性を理解いただけるように努めています。

責任ある資源・原材料調達への取り組み

ビジネスのグローバル化に伴い、サプライチェーンのグローバル化、多様化が進展しています。しかし、世界には強制労働・児童労働や劣悪な環境での労働など、労働者の権利への配慮がされていない状況が存在しています。
デンソーは、その一つとして、紛争や人権侵害のリスクが高い地域での労働環境の下で採掘されている鉱物(3TG等)の問題をサプライチェーンにおける重要な問題として認識しています。
具体的な取り組みとしては、会社として責任ある「資源・原材料調達方針」を策定するとともに、「サプライヤーサステナビリティガイドライン」を改訂いたしました。これをもとにサプライヤーに対し、RMI* 認証済の精錬所からの調達を要請しています。また、年1回、関連するすべてのサプライヤーにご協力いただき、鉱物調査(3TG等を対象)を実施しております。
今後も、サプライヤーの皆様と協力し、懸念のある鉱物の使用回避にサプライチェーン全体で取り組んでまいります。

* RMI : Responsible Minerals Initiative, 責任ある鉱物調達を推進する国際的な業界団体

 

【 資源・原材料調達方針 】

私たち(デンソーグループ)は、人権・環境等の社会問題への影響を考慮した調達活動を推進しています。一例として、 コンゴ民主共和国および周辺諸国産の紛争鉱物問題は、サプライチェーンにおける重大な社会問題の一つと認識しています。
影響のある鉱物の使用状況について調査を実施し、「社会問題を引き起こす」、あるいは「武装勢力の資金源になっている」などの懸念のある場合には、使用回避に向け取り組みを実施します。また、サプライヤーにも、私たちの考えを理解いただくとともに、責任ある資源・原材料の調達活動に取り組んでいただくよう要請していきます。

グリーン調達

「デンソーエコビジョン2025」に基づく環境負荷物質の継続的な削減に向け、「グリーン調達ガイドライン」を設けています。これに基づき、サプライヤーに下記事項を要請しています。

  1. 環境マネジメントシステムの構築

  2. 環境負荷物質の管理と削減

  3. 物流に関わるCO2 排出量、梱包包装材の削減

  4. 環境改善への取り組み

サプライチェーンのカーボンニュートラル推進

産業革命以降の世界的な気温上昇はデータでも裏付けられており、気温上昇の抑制はデンソーの重要な課題です。解決に向けては、デンソーだけでなくサプライヤーと共同で活動を推進していく必要があります。
そのため、サプライヤーと中期目標「CO2排出量を2030年度までに2020年度比25%(=2.5%/年)削減」、長期目標「2050年度にカーボンニュートラル実現」を共有し、活動の推進をお願いしています。また、サプライヤーのCO2排出量や課題を把握し、サプライヤーに合った支援策を提供しています。具体的にはデンソーの省エネの進め方の紹介、エネルギー計測機の貸出し、物流のCO2削減、低CO2材料への切替え、再生エネルギーの調達手段の共有など、複数の切り口により活動を支援し、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指しています。
また、「カーボンニュートラル説明会」や工場の改善事例を現認いただく「カーボンニュートラル工場見学会」等の意思疎通の場を適宜開催することで、サプライヤーの意向や状況を確認し、連携した活動を推進しています。

 

  • サプライチェーンでのカーボンニュートラルに向けたロードマップ

    • サプライチェーンでのカーボンニュートラルに向けたロードマップ
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      カーボンニュートラル説明会

    •  Carbon neutral factory tour

      カーボンニュートラル工場見学会

調達部員に対する研修

サプライヤーとともにグリーン調達活動を推進するため、デンソーでは、毎年、すべての調達部員に対して、グリーン調達ガイドラインの内容について研修を行っております。

環境リスクアセスメントの実施

  1. 環境負荷物質
    近年各国で環境法規制が強化されています。デンソーではそれらの規制に確実に対応するため、サプライヤーにご協力いただき、納入される製品に含まれる化学物質についてIMDS(International Material Data System:自動車産業向けのデータシステム)を標準フォーマットとして調査しております。

  2. サプライチェーンにおける環境面でのエンゲージメント
    気候変動による異常気象、生態系の破壊、資源の枯渇など多くの環境課題が発生し、持続可能な社会の実現に向け、近年責任ある行動を取ることが求められております。
    デンソーでは、サプライヤーに環境保全に向けた方針・マネジメントシステムの有無、水資源やGHG排出量など重要なテーマへの管理有無を定期的に確認、改善を要請し、サプライチェーン全体での環境改善に努めております。

  3. 新規サプライヤー
    新規サプライヤーに対しての環境リスクアセスメントとして、取引を開始するにあたりISO14001または、第三者認証を取得しているかの確認を実施しています。認証を取得していない場合は、デンソー独自で制定したガイドラインを満足しているかの確認を行い、満足していない項目がある場合には、是正要求をし、結果の確認を行っています。

贈収賄防止への取り組み

デンソーは、贈収賄防止の基本方針・専門委員会の下、贈収賄防止ルールの整備・社員への啓発を行うなど、贈収賄防止を徹底しています。
デンソーの事業に関与する全てのサプライヤーにも、政治・行政との関係において贈賄等を行ったり、第三者に対してデンソーグループのための不当な利益等の取得・維持を目的とした接待贈答・金銭等の授受・供与を行ったりすることのないよう、要請しています。

業界団体との連携

デンソーは日本自動車部品工業会(JAPIA)・電子情報技術産業協会(JEITA)などの業界団体に参加しており、取締役社長が2023年5月より、JAPIAの理事を務めています。そして、サプライチェーン全体の課題に対し、カーメーカーや電子部品・半導体業界などとの連携も強化し、取り組みをリードしています。
さらに実務ベースでは、これら業界団体のワーキンググループに参画しています。例えば、JAPIAの紛争鉱物ワーキングにおいては、各社における調査の導入・拡充に向けた支援を推進してきました。
また、社会全体でのカーボンニュートラル達成には業界全体での連携した取り組みが重要です。デンソーはJAPIAの活動を通じて、複雑な自動車部品業界のサプライチェーンにおける製造及び使用段階の環境負荷量を効率的に算出するための「JAPIA LCI算出ガイドライン *1.」の策定、および算出ツールを開発してきました。この活動が評価され2018年3月にLCA日本フォーラム *2.より「経済産業省産業技術環境局長賞」を受賞致しました。さらに、カーボンニュートラルに向けたガイドラインの作成や政府への要望具体化、他団体との連携強化など、業界全体でのカーボンニュートラルを実現するための活動を推進しています。

*1. LCI(ライフサイクルインベントリー):対象製品のライフサイクルを通じて排出される環境負荷量を計算する手法
*2. LCA(ライフサイクルアセスメント):LCIで算出した結果を用いて環境への影響を評価する手法

今後の取り組み

サプライチェーンにおける、環境、労働安全衛生、人権尊重などのサステナビリティへの取り組みについて、お客様や投資家などのステークホルダーからの期待が高まっています。
引き続き「サプライヤーサステナビリティガイドライン」に基づく自己診断・点検・改善といったPDCAサイクルの定着に向け、サプライヤーと一体となって、継続的に活動のレベルアップを図るとともにサプライヤーとのパートナーシップ強化を図っていきます。