
サプライチェーンでのサステナビリティ推進
基本的考え方
グローバル企業には、その社会的影響力の大きさから、自社はもちろんサプライヤーに対しても、法令順守、人権・労働、環境、企業倫理などに配慮した企業行動を促す施策が期待されています。このようにサプライチェーン全体において社会的責任の実践をはじめとした「サステナビリティ」を推進することこそ、社会から信頼・共感される企業をめざすデンソーグループの使命と考えています。
デンソーではすべてのサプライヤーに、「デンソーグループサステナビリティ方針」の趣旨へ同意いただくとともに、「コンプライアンス・人権擁護・環境保全・職場安全など社会的責任の順守」を盛り込んだ「取引基本契約書」の締結、および サステナビリティに関するサプライヤーでの窓口担当者の配置や方針の明確化など、サステナビリティの推進を依頼しています。
具体的な取り組み
「サプライヤーサステナビリティガイドライン」に基づくサステナビリティの推進
デンソーでは、国内外の業界団体やお客様の要請を踏まえ、サプライヤーとともに効率的にサステナビリティを推進するため「サプライヤーサステナビリティガイドライン」を策定し、すべてのサプライヤーと共有しています。また、当ガイドラインに基づき、定期的に「自己診断シート」によるセルフチェックを行っていただいております。
2021年度は、グローバル主要サプライヤー約1,200社(購入金額の約50%)に自己診断をお願いし、「サプライヤーサステナビリティガイドライン」の趣旨に沿った活動の推進への合意を得ることができました。
また、毎年一定数のサプライヤーを対象にダイアログを実施し、特に必要な項目については改善をお願いしております。
なおサプライヤーには、自社のサプライヤー(デンソーグループの二次以降のサプライヤー)にも同様の取り組みを展開いただくようにお願いし、サプライチェーンでの同様取り組みについても実施しています。
「サプライヤーサステナビリティガイドライン」の主な内容と展開
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主な内容
(1)安全・品質
(2)人権・労働
(3)環境
(4)コンプライアンス
(5)情報開示
(6)リスクマネジメント
(7)責任ある資源・原材料調達
(8)社会貢献
(9)皆様のサプライヤーへの展開 -
展開
1.周知 サステナビリティガイドラインを配布 2.強み・弱みを見える化 手引き・診断シートを配布し自己点検
診断結果を改修・分析・フィードバック
3.点検 デンソーの担当者が訪問しエビデンスに基づきチェック 4.改善 勉強会(講演など)を開催
新規サプライヤーのアセスメント
新規に取引を開始するサプライヤーについては、取引先選定要領を社内規定として定め、運用をしています。
財務状況などの審査に加え、ISO9001やIATF16949などの品質マネジメントに関わる認証の取得状況の確認、環境マネジメント等のサステナビリティ課題についての調査を行い、取引開始の可否を判断しています。
サプライヤーとのダイアログ
デンソーのサプライヤー数社を訪問し、診断結果に基づく意見交換を実施しています。
事業を推進する際に考慮に入れなければならない社会課題は近年急増しており、留意すべき点を共有するとともにサプライヤーにて改善が必要になった場合には、デンソーからもサポートしています。
サプライヤーの声
活動の意見交換は非常に参考になる。今後もそういう機会があればありがたい。
法規制(内部通報など)の改正情報、カーボンニュートラル/人権など社会動向に関する情報は専門部門のない会社は情報入手が難しい。
今後も情報を展開してくれるとありがたい。
など
2014年以降の累計ダイアログ社数:45社
ダイアログにおける主な指摘・支援事項:
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サステナビリティ方針の策定と従業員への展開
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サプライヤーへのサステナビリティガイドラインの展開
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外国人技能実習生の活用における注意点の共有
サプライヤー研修
サステナビリティ分野における企業を取り巻く環境は急速に変化しており、サプライチェーン全体で動向を理解し、適切な対応を取っていくことが重要と考え、デンソーの主要サプライヤーに対する研修を行っています。
2022年3月には、国内サプライヤー約90社を対象にサステナビリティ説明会を開催し、サステナビリティ全体や環境、人権などのトピックスについて、お客様とはじめとしたステークホルダーからの要請を説明いたしました。
また、カーボンニュートラルや情報セキュリティの強化などについても適宜説明会を開催し、サプライチェーン全体での取り組みの重要性を理解いただけるように努めています。
責任ある資源・原材料調達への取り組み
ビジネスのグローバル化に伴い、サプライチェーンのグローバル化、多様化が進展しています。しかし、世界には強制労働や劣悪な環境での労働など、労働者の権利への配慮がされていない状況が存在しています。
デンソーは、その一つとして、コンゴやその周辺諸国で劣悪な労働環境の下で採掘されている紛争鉱物の問題をサプライチェーンにおける重要な問題として認識しています。
具体的な取り組みとしては、会社として「紛争鉱物対応方針」を策定するとともに、「サプライヤーサステナビリティガイドライン」を改訂いたしました。これをもとにサプライヤーに対し、責任ある資源・原材料調達を要請しています。また、年1回、関連するすべてのサプライヤーにご協力いただき、紛争鉱物調査を実施しております。2021年度は調査対象となるすべてのサプライヤー(約5,000社)より調査票を提出いただきました。その中で紛争鉱物として問題となる重大な事案は見当たりませんでした。
電動化など市場の変化に伴い対象鉱物の広がりもあるため、リスク対象を定期的に見直し、デンソーとしての対応方法も検討していきます。
今後も、サプライヤーの皆様と協力し、懸念のある鉱物の使用回避にサプライチェーン全体で取り組んでまいります。
【 紛争鉱物対応方針 】
私たち(デンソーグループ)は、人権・環境等の社会問題への影響を考慮した調達活動を推進しています。
コンゴ民主共和国および周辺諸国産の紛争鉱物問題は、サプライチェーンにおける重大な社会問題の一つと認識しています。
紛争鉱物の使用状況について調査を実施し、「社会問題を引き起こす」、あるいは「武装勢力の資金源になっている」懸念のある場合には、使用回避に向け取り組みを実施します。
また、サプライヤーにも、私たちの考えを理解いただくとともに、責任ある資源・原材料の調達活動に取り組んでいただくよう要請していきます。
グリーン調達
「デンソーエコビジョン2025」に基づく環境負荷物質の継続的な削減に向け、「グリーン調達ガイドライン」を設けています。これに基づき、サプライヤーに下記事項を要請しています。
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環境マネジメントシステムの構築
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環境負荷物質の管理と削減
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物流に関わるCO2 排出量、梱包包装材の削減
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環境改善への取り組み
サプライチェーンのカーボンニュートラル推進
産業革命以降の世界的な気温上昇はデータでも裏付けられており、気温上昇の抑制はデンソーの重要な課題です。解決に向けては、デンソーだけでなくサプライヤーと共同で活動を推進していく必要があります。
そのため、サプライヤーのCO2排出量や課題を把握し、サプライヤーに合った支援策を提供しています。具体的にはデンソーの省エネノウハウの横展開、物流のCO2削減、低CO2材料への切替えなど、複数の切り口により活動を支援し、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指しています。
調達部員に対する研修
サプライヤーとともにグリーン調達活動を推進するため、(株)デンソーでは、毎年、すべての調達部員に対して、グリーン調達ガイドラインの内容について研修を行っております。
環境リスクアセスメントの実施
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環境負荷物質
近年各国で環境法規制が強化されています。デンソーではそれらの規制に確実に対応するため、サプライヤーにご協力いただき、納入される製品に含まれる化学物質についてIMDS(International Material Data System:自動車産業向けのデータシステム)を標準フォーマットとして調査しております。 -
水の使用量
水質汚染・水不足・洪水等の多様な水問題が深刻化し、それら水リスクへの取り組みがますます重要になってきています。デンソーでは18年からサプライヤーに事業活動で発生する排出量取水量(工業用水, 上水, 地下水, 雨水 等)を把握しているか否かの調査を定期的に行っています。 -
新規サプライヤー
新規サプライヤーに対しての環境リスクアセスメントとして、取引を開始するにあたりISO14001または、第三者認証を取得しているかの確認を実施しています。認証を取得していない場合は、デンソー独自で制定したガイドラインを満足しているかの確認を行い、満足していない項目がある場合には、是正要求をし、結果の確認を行っています。
贈収賄防止への取り組み
デンソーは、贈収賄防止の基本方針・専門委員会の下、贈収賄防止ルールの整備・社員への啓発を行うなど、贈収賄防止を徹底しています。
デンソーの事業に関与する全てのサプライヤーにも、政治・行政との関係において贈賄等を行ったり、第三者に対してデンソーグループのための不当な利益等の取得・維持を目的とした接待贈答・金銭等の授受・供与を行ったりすることのないよう、要請しています。
イニシアチブへの参加
デンソーは日本自動車部品工業会(JAPIA)・電子情報技術産業協会(JEITA)などの業界団体に参加しており、取締役社長が2022年5月、JAPIAの会長に就任いたしました。そして、サプライチェーン全体の課題に対し、カーメーカーや電子部品・半導体業界などとの連携も強化し、取り組みをリードしています。
さらに実務ベースでは、これら業界団体のワーキンググループに参画しています。例えば、JAPIAの紛争鉱物ワーキングにおいては、各社における調査の導入・拡充に向けた支援を推進してきました。
また、社会全体でのカーボンニュートラル達成には業界全体での連携した取り組みが重要です。デンソーはJAPIAの活動を通じて、複雑な自動車部品業界のサプライチェーンにおける製造及び使用段階の環境負荷量を効率的に算出するための「JAPIA LCI算出ガイドライン【注1】」の策定、および算出ツールを開発してきました。この活動が評価され2018年3月にLCA日本フォーラム【注2】より「経済産業省産業技術環境局長賞」を受賞致しました。さらに、カーボンニュートラルに向けたガイドラインの作成や政府への要望具体化、他団体との連携強化など、業界全体でのカーボンニュートラルを実現するための活動を推進しています。
【注1】 LCI(ライフサイクルインベントリー):対象製品のライフサイクルを通じて排出される環境負荷量を計算する手法
【注2】 LCA(ライフサイクルアセスメント):LCIで算出した結果を用いて環境への影響を評価する手法
今後の取り組み
サプライチェーンにおける、環境、労働安全衛生、人権尊重などのサステナビリティへの取り組みについて、お客様や投資家などのステークホルダーからの期待が高まっています。
引き続き「サプライヤーサステナビリティガイドライン」に基づく自己診断・点検・改善といったPDCAサイクルの定着に向け、サプライヤーと一体となって、継続的に活動のレベルアップを図るとともにサプライヤーとのパートナーシップ強化を図っていきます。